2006 Fiscal Year Annual Research Report
幾何学的フラストレーション系における非クラマース二重項基底状態が創る新奇量子現象
Project/Area Number |
17740234
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
松平 和之 九州工業大学, 工学部, 助手 (40312342)
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Keywords | 幾何学フラストレーション / パイロクロア酸化物 / Pr化合物 / 熱電能 / 単結晶育成 |
Research Abstract |
本研究では幾何学的にフラストレートした磁性体Prパイロクロア酸化物Pr_2M_2O_7において、磁性を担うPrの非クラマース二重項結晶場基底状態に付随するイジング性を有した磁気的自由度及び四極子モーメントによる軌道自由度によって引き起こされる新たな量子現象の探索とその解明を目的として研究を行なった.本年度は以下の2つの試料の研究を進めた.(1)Pr_2Ir_2O_7が示す近藤効果や大きな負の熱電能(〜70Kに極小)の起源解明の為,Prを他の希土類に置換したパイロクロアイリジウム化合物Ln_2Ir_2O_7(Ln=Nd,Sm,Eu,Gd)の研究を進めた.この結果,類似の大きな負の熱電能はLn=Ndでも見られ(〜80Kに極小),フェルミ準位近傍におけるt_<2g>バンドの特異な構造に起因している可能性が高いことが示唆される.近藤効果による振る舞いを明らかにするためには,より低温域での詳細な測定が必要である.また,これまでの報告とは異なりLn_2Ir_2O_7(Ln=Nd,Sm,Eu,Gd)において金属絶縁体転移を示す事を見出した.また,KFフラックス法によりPr_2Ir_2O_7の単結晶育成にも成功した.(2)Pr_2Zr_2O_7の多結晶試料による低温物性の研究を進めた.80mKまでのAC磁化率測定からPr_2Zr_2O_7は長距離相転移を示さず,磁化の緩和が遅くなることを見出した.磁化や比熱の解析からPr_2Zr_2O_7は<111>Ising反強磁性体であると考えられる.また,キセノンランプ四楕円型FZ炉による純良単結晶育成を進めた.前年度にて単結晶試料にてPrサイトの大きな欠損が判明しており,本年度はその改善を行なった.育成方法の工夫により,Prサイトが8%程度欠損している単結晶(SEM-EDS分析から)が得られ改善が見られた.
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Research Products
(1 results)