2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17740254
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉野 元 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助手 (50335337)
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Keywords | スピングラス / 統計力学 |
Research Abstract |
本研究でガラス系のダイナミックスを支配する物理的なプロセスを解明する為にある種の4点時空間相関関数を詳しい解析を行っている。今年度は初年度の研究として、まず、この4点相関関数に対応する非線形応答関数の、平衡状態における性質の解明を精力的に行った。具体的には1段階のレプリカ対称性の破れを示す平均場模型のガラス相における外場に対する線形および非線形応答関数の解析を行なった。低温展開とレプリカ法の2つの方法によって、ガラス相において非線形応答関数が強いサンプル揺らぎをしめして非自己平均的であること、系のサイズとともに発散することを解析的に明らかにした。このことは外場に対する系の応答が、メソスコピックなスケールでは外場の関数として階段的に振舞うことを意味する。1つ1つの階段は、基底状態と励起状態のレベル交差を反映している。これはレプリカ対称性の破れと深く関係する現象であり、非線形応答すなわち4点相関関数の振る舞いからガラス相の平衡状態を支配する低エネルギー励起の物理的な情報を取り出せることを示唆している。一方、巨視的なスケールでは階段の幅は無限小になり、滑らかな関数に収束してゆく。これが通常の熱力学的な応答に対応することがわかった。マクロなスケールではレベル交差も巨視的に起こっている。これを定量的に調べるために一般化されたcomplexityを導入した。ここでcomplexityとはガラス系のエネルギー状態密度の対数をとったものであり、普通はエネルギーだけの関数として定義するが、これを一般化し、エネルギーと同時に今、注目する外場に共役な物理量の2つの変数に対する状態密度を定義した。具体的な平均場模型でこの一般化されたcomplexityの計算を実行するとともに、その情報から巨視的なレベル交差について物理的な考察を展開した。
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Research Products
(4 results)