2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17740254
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉野 元 大阪大学, 大学院理学研究科, 助手 (50335337)
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Keywords | スピングラス / ガラス転移 / 統計力学 / 揺動散逸定理 / 非線形応答 |
Research Abstract |
本年度はガラス系の静的・動的な非線形応答について、平均場模型に基づく解析的な研究を行った。 まず、前年度に引き続き、1段階のレプリカ対称性の破れを示す平均場模型のガラス相に注目し、外場に対する階段的な静的非線形応答を詳細に解析した。具体的には、揺動散逸の関係に基づいて、線形・非線形感受率のサンプル揺らぎを解析するための母関数を構築し、それに基づいて、感受率のサンプルゆらぎを解析した。前年度の計算は、外場が0の近傍場合に限られていたが、ある種の模型では任意の外場における計算を正確に実行することができた。これらの結果から、メンスケールでの階段的応答にともなう特異な熱揺らぎの統計的性質の一般性が示された。 揺動散逸の関係は、応答が外場に関して解析的であることを仮定している。上記の結果から、階段的応答の強い非線形性によって、応答の外場についての展開の収束半径が、階段の「幅」のスケールに限定されることが結論される。この「幅」は低温極限で0となる。そこで次に、揺動散逸の関係を用いず、低温展開によって低温極限での応答を直接計算する解析を実行した。個々のサンプルにおける応答は、低温極限では階段の連続で、強い非線形関数である。しかし、サンプル平均した応答は、外場について滑らかな関数となる。実際、これについて階段と階段の「間隔」のスケール程度の収束半径をもつ級数展開が得られた。これもまたメンスケールでの応答を表していると考えられる。以上の結果の概略についての論文を発表した。その際、比較のために実空間繰り込み郡に基づく数値解析も行い、上記の平均場理論の結果との比較を提示し、密接な対応関係があることを指摘した。また現在、より詳細を含め、メソスコピックなガラス系における階段的非線形応答についての本論文を投稿中である。 また、球形模型とよばれる平均場スピングラス模型のLangevin方程式を解析的に解き、相転移点および、ガラス相における静的・動的な非線形応答を詳細に解析した。この模型はレプリカ対称性の破れを示さない、簡単な系であるが、非常に詳細な解析が可能である。特に、動的な非線形帯磁率のスケーリング特性を明らかにすることができ、実験との比較も行った。
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Research Products
(2 results)