2006 Fiscal Year Annual Research Report
GW近似をベースとした第一原理計算コードの開発と強相関軌道分極系への適用
Project/Area Number |
17740256
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
獅子堂 達也 広島大学, 大学院先端物質科学研究科, 助手 (20363046)
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Keywords | 第一原理計算 / FLAPW / 誘電関数 / GW近似 / MnO |
Research Abstract |
全電子FLAPW法の枠組みの中で、乱雑位相近似による誘電関数を十分な精度で効率よく計算できる手法・計算コードの開発を行った。誘電関数、分極関数、クーロン相互作用を適切なブロッホ基底で展開する必要があるが、全電子法においては、Kotani等による混合基底、すなわちマフィンティン球内では原子様関数の積、格子間領域では平面波を用いる方法が主流となっている。これの欠点として(i)基底の数が多くなる(ii)クーロン行列の計算が煩雑になる(iii) q→0の極限でのクーロン行列および分極関数の振る舞いが解析的に分からないため、ガンマ点でのクーロン発散の問題を正しく取り扱うことができない。すなわち最も重要な巨視的誘電率を正しく計算できない、ことが上げられる。 本研究では誘電関数の基底として全空間において定義される純粋な平面波を採用した。これによりクーロン行列要素は対角型でかつ解析的になり、Pick等の方法およびFreysoldt等の方法に従うことで、上述の(iii)の問題を正しく取り扱い、最も重要な巨視的誘電率を精度よく求めることができる。マフィンティン球内での積分に計算時間がかかるがAryasetiawan等の原子軌道積基底の手法を応用することで効率よく計算できるようにした。またコード全体にわたって対称性をフルに利用し計算効率をあげる仕様となっている。 問題となってくるのは必要となる平面波のカットオフである。これを調べるため比較的局在性の強い3d電子が電子状態の主役となっている第二種反強磁性絶縁体MnOを例にとり計算を行った。その結果、驚くべきことに波動関数のLAPW基底と同程度のカットオフ(16Ryから20Ry)で誘電関数として十分な精度が得られることがわかった。これはクーロン相互作用が長距離力であることに由来する。異なるタイプの物質である半導体Si、強磁性金属Niにおいても同様のカットオフで十分であることを確認した。Kotani等の混合基底に対して約半分の基底で済み、かつ、巨視的誘電率を正しく求めることができる。
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