2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17740263
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
斎藤 弘樹 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (60334497)
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Keywords | ボース・アインシュタイン凝縮 / レーザー冷却 / 磁性 / スピン自由度 / ソリトン |
Research Abstract |
本研究の目的は、冷却原子のボース・アインシュタイン凝縮体を用いて、水滴のような自ら凝集した状態を作る方法を理論的に提案することにある。これを目的としつつ、今年度は主にスピン自由度を持つボース凝縮体の磁性に関して研究を行なった。 本年度の研究成果は大きく分けて二つある。一つは、スピン2凝縮体の基底状態の磁性相を測定する方法の提案である。従来、基底状態の磁性相を決定するには系を長時間緩和させる必要があったが、スピン2の系は一般に寿命が短いためこれを行うことができない。そこで私は、系のダイナミクスから基底状態の磁性相を決定する方法を与えた。この方法の利点は、短時間のダイナミクスを観測するだけでよいので、短寿命の状態にも適用できるという点にある。 本年度のもう一つの大きな成果は、系の磁化過程において、空間的なパターンが自発的に発生するという現象の発見である。系が磁化していない状態から出発すると磁化しようとするが、スピン保存則のため一方的に一様に磁化することは禁止されている。そのため、系は空間的な構造を形成しつつ磁化するのである。これは、通常の磁性体における磁区構造などの生成機構とは本質的に異なっている。 凝縮体中に自発的に生成される磁化のパターンは、状況によって様々であることが見出された。例えば、細長い一次元的な系では互い違いの磁区構造が生成される。一方、平たい二次元的な系では同心円状の磁区構造が生成される。また、二次元的な場合で、パラメータがある条件を満たすと、トポロジカルなスピン構造が生成されるという大変面白い現象を見出した。これはヘリウムにおけるMermin-Ho構造に類似しており、スピン成分が自発的に回転を始めることを意味する。この自発的回転という現象にはカイラル対称性の自発的破れが関連している。 以上の研究はボース・アインシュタイン凝縮体の磁性に関する研究だが、今後これを物質波小滴の安定化に応用することを目指す。
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Research Products
(5 results)