2005 Fiscal Year Annual Research Report
ガラスのスローダイナミクスにおけるモード結合理論の定量的解釈
Project/Area Number |
17740274
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
狩野 旬 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科・物性・分子工学専攻, 助手 (50375408)
|
Keywords | 複雑液体 / ガラス / 光散乱実験 |
Research Abstract |
液体ガラス転移のダイナミクスの本質が理解されていないのは、その巨視的性質が実に様々なスケールを持つ運動過程により支配されているためである。本研究ではこれを打破すべく新しい実験手法の開発を行うことを目的とする。比熱測定・周波数領域での誘電測定・光散乱実験では充分観測できなかった複雑液体中でのミクロな動的機構を、フェムト秒パルスレーザーを用いた光カー効果(OKE)を利用したコヒーレントフォノン励起法をいることで直接時間領域での観測から解明する。今年度の研究成果として、OKEにヘテロダイン検波システムを取り入れたOHD-OKEシステムを立ち上げることに成功したので報告する。再生増幅器付チタンサファイヤモードロックレーザー(平成16年度 基盤研究(A)にて購入(研究代表者:小島誠治))から挙振させた、70フェムト秒の時間幅をもつ超短光パルスを励起光・検出光源とし光学系を組み、試料セル内で励起光と検出光を時空間干渉させることで光カー効果をコヒーレントに誘起させヘテロダイン検出できるものを立ち上げた。立ち上げたシステムの信頼性は、光カー効果の強い二硫化炭素、ニトロベンゼン等を試料として用い検証を行った。その結果、数百フェムト秒から100ピコ秒にわたる広い時間領域での液体中のミクロなゆらぎを観測する事に成功し、スペクトルはラマン散乱の実験結果ともよく一致した。今後は様々なガラス形成物質の低エネルギーモードを100フェムト秒から数百ピコ秒の時間領域にて測定し、OHD-OKE実験でのデータの蓄積を行い他の実験結果との精度比較および新規性を調べる。
|