2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17740276
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
羽鳥 晋由 山形大学, 工学部, 助教授 (00283036)
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Keywords | 筋収縮 / 細胞骨格 / アクチン / ミオシン / 滑り運動 / ATPase / 分子間協調 |
Research Abstract |
高速型ミオシン分子によるアクチン繊維の運動が実現されるための運動伝達様式を繊維に潜在する能力から見出すことを目的とした.アクチン繊維に発生するゆらぎを定量評価すると共に繊維内部のメソスコピックな構造変化を直接検出することを試みた. 従来,滑り運動の評価は,ミオシン分子をガラス基盤上に固定した後,アクチン繊維をミオシン分子上で滑らせる方法が用いられてきた.この方法では,繊維内部に発生する構造変化が偶発的なものなのか,それとも性質によるものなのかを判断することが難しかった.そこで,アクチン繊維をガラス基盤上にゆるく拘束した後に,アデノシン3リン酸(ATP)存在下でミオシン分子と反応させる方法を用いて,アクチン繊維のゆらぎと滑り運動とを分離した. 蛍光イメージからナノメートル計測を実現した独自のソフトウェアを用いて,繊維局所で発生した変位ゆらぎや蛍光ゆらぎを測定し,それらの相関解析を行って特性を評価した.ATP濃度を0から500μMまでの範囲で変化させたとき,変位ゆらぎの変動速度が,ATP100μM付近でいったん低下してから,増加した.このことはミオシン分子によるアクチン繊維への作用が,加算的なものではなく,ランダムな熱運動をゆっくりとしたゆらぎに変調したことを示唆する. 蛍光ゆらぎに関して,ピーク値と広がりの関係を調べたとき,負の相関を示したことから,蛍光ゆらぎは蛍光分布の密度変動,つまりメソスコピックな構造変化,を反映していたと考えれる.そして,この負の相関もATP100μM付近で大きな値を示した.以上の結果は,多数のミオシン分子がATP加水分解を伴ってアクチン繊維に作用するとき,繊維には動的な構造変化が発生し,ATP濃度に応じて特性を変化(転移)させていることがわかった.この構造変化が運動に対して能動的に関与している可能性がある.
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