2006 Fiscal Year Annual Research Report
過冷却状態における分子性液体の動的不均一性に関する理論的及び計算機を用いた研究
Project/Area Number |
17740282
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
鄭 誠虎 分子科学研究所, 理論分子科学研究系, 助手 (40390645)
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Keywords | 過冷却液体 / ガラス転移 / 分子性液体 / 計算機シミュレーション |
Research Abstract |
計算機シミュレーションを用いた研究に関して: 去年度に引き続き、2原子分子性液体の計算機シミュレーションを行った。本年度において、ようやく念願であったT_cと呼ばれるcrossover temperature以下でのシミュレーションが終了した。これまで行った解析から、本研究の当初の目的であった、以下の問いに答えられるようになった。(i)動的不均一性(緩和時間の分布)の大きさはどの程度で、その温度依存性はどうか → 具体的な大きさ及び温度依存性を求めることができた(図は省略)。(ii)動的不均一性の寿命はどれくらいか? → 構造緩和時間と呼ばれる時間と相関があることが明らかになった。(iii)並進と回転運動における動的不均一性の相関はどれくらいあるのか? → 高温において相関はほとんど無いが、低温になるに従い相関が大きくなることを明らかにし、それを相関係数で定量化した。(iv)動的不均一性の起源として、空間の不均一性が見られるか? → 空間の不均一性が見られることを確認した。今後の課題として、いわゆる「Stokes-Einstein則の破れ」がこれらの知見をもとに説明されるのかを詳細に調べていきたいと考えている。 理論研究に関して: 動的不均一性を理論的に研究するための多体の相関関数の基礎理論の構築に関して進展が見られた。これは、activated hopping processと呼ばれる過程に対して固体物理の分野で発展してきた手法を用いて得られた理論であり、これまでの「ガラス転移のモード結合理論」の自然な拡張になっている。来年度も引き続きこの理論をさらに発展させ、シミュレーション結果との比較を行いたいと考えている。
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