2007 Fiscal Year Annual Research Report
過冷却状態における分子性液体の動的不均一性に関する理論的及び計算機を用いた研究
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17740282
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
鄭 誠虎 Institute for Molecular Science, 理論・計算分子科学研究領域, 助教 (40390645)
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Keywords | 過冷却液体 / ガラス転移 / 分子性液体 / 計算機シミュレーション |
Research Abstract |
前年度に引き続き、過冷却状態における2原子分子液体の計算機シミュレーション結果の解析を行った。前年度までの解析結果から、本研究の当初の目的であった問い(1動的不均一性(緩和時間の分布)の大きさはどの程度で、その温度依存性はどうか?2動的不均一性の寿命はどれくらいか?3並進と回転運動における動的不均一性の相関はどれくらいあるのか?4動的不均一性の起源として、空間の不均一性が見られるのか?)に答えられるようになっていたが、本年度においては、並進及び回転運動におけるいわゆる「Stokes-Einstein則の破れ」が、このような特徴を持つ動的不均一性を元に説明できるかに着目した解析を行った。その結果、従来の描像(Stokes-Einstein則の破れが動的不均一性に起因するという考え方)は不適当であり、並進及び回転運動における「ジャンプ的なプロセス」が動的不均一性及びStokes-Einstein則の破れの起源となっていると考える方がより自然であるとの解析結果を得た。このことについてより詳しく調べていくことは、今後の研究課題としたい。 また、このような計算機シミュレーションの結果に対応する理論的な進展も見られた。即ち、activatedhopping processと呼ばれる過程に対して、固体物理の分野で発展してきた手法を用いて「ガラス転移のモード結合理論」を拡張することにより、この理論がStokes-Einstein則の破れを再現することを示した。これは、Stokes-Einstein則の破れにおいて、「ジャンプ的なプロセス」が決定的に重要であることを示している。この理論を用いた動的不均一性の研究も同時に進めたが、時間切れのため、まだ満足できる水準まで達していない。この問題に対しても、今後の研究課題として取り組んでいきたいと考えている。
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