2005 Fiscal Year Annual Research Report
雲解像モデルを用いた渦状降雪擾乱の多重スケール構造に関する研究
Project/Area Number |
17740300
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川島 正行 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (10281833)
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Keywords | 気象学 / 大気現象 |
Research Abstract |
平成17年度は水平風シアを伴う密度流先端における渦状擾乱の発達過程について、理想化した初期条件モデル設定のもとで数値実験を行った。主要な実験は購入したパーソナルコンピュータを用いて行った、実験は密度流の温度の周囲の気温からの差と水平風速差の2つのパラメータを広い範囲で変えて行った。ある一定の水平風速差に対し、密度流の温度差が十分小さい場合はシアライン上での水平不安定の成長により明瞭な渦状の擾乱が生じ、スパイラル状の降水域が生じたが、密度流の温度差が大きくなるにつれ不安定波の成長速度、渦が生じてからの融合成長速度が遅くなり、温度差がある一定の値を超えると不安定波自体生じなくなることがわかった。擾乱のエネルギー収支解析により、不安定波の成長速度が遅くなるのは大きな密度差に伴う鉛直循環の強化により、不安定波のエネルギーが上方に運ばれてしまうためであることが分かった。 また、渦状擾乱の力学場の解析により、スパイラル状の降水域の形成において力学的に誘起される上向き鉛直気圧傾度力が重要であることが分かった。この気圧傾度力を作る下層の高圧部は、シア不安定に伴う水平風の合流に対応して生じたものである。通常、シアラインは密度の異なる空気塊の間に形成されることが多いが、このメカニズムにより、シアラインが密度差を伴わず、さらに成層が中立〜安定で初期に上昇域が無い場合でもスパイラル状の降水域が形成されうることが明らかになった。また、降水量の解析により、渦状擾乱の発生の有無によリシアライン上の総降水量は変わらないが、渦状擾乱が発生した場合、前述の気圧傾度力の働きにより上昇流が強化され、降水量の最大値は約2〜3倍程度になることが分かった。
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