2006 Fiscal Year Annual Research Report
海洋深層循環が海洋炭素循環に果たす役割とその気候への影響の評価に関する研究
Project/Area Number |
17740302
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡 顕 東京大学, 大学院理学系研究科, 特任助手 (70396943)
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Keywords | 海洋深層循環 / 海洋炭素循環 / 海洋物質循環モデル |
Research Abstract |
本研究では、全球海洋大循環モデルに炭素の循環を組み込んだ海洋物質循環モデルを開発し、海洋深層まで含めた全球スケールでの海洋炭素循環のモデリングを行い、海洋深層循環が炭素循環に果たす役割の理解と、その気候への影響の評価を目的とする。今年度は、前年度までに開発を進めてきた海洋物質循環モデルを利用した実験として、地球温暖化に伴う海洋深層循環の変化が海洋炭素循環にどのような影響を与え、それが大気二酸化炭素濃度にどの程度影響しうるのかを評価するための数値実験を行った。数値実験には、海洋物理場を境界条件として利用できるオフライン版の海洋物質循環モデルを用いた。海洋の物理場については、東京大学気候システム研究センターをはじめとする研究グループで開発された大気海洋結合大循環モデルMIROCによる大気二酸化炭素濃度漸増実験の結果を利用した。数値実験として、「海洋の温度場のみが変化した場合」「海洋の循環場のみが変化した場合」などの感度実験もあわせて行い、それらの実験結果の解析を行った。その結果、海洋循環の変化による大気二酸化炭素濃度への影響は、海洋表層の温度変化による影響に比べ非常に小さいものであると見積もられた。それには、海洋深層循環の弱化に伴い海洋表層への栄養塩の供給が減少し、海洋の生物ポンプが弱化するというフィードバック機構が働いていることが関係しており、海洋深層循環の変化が海洋の基礎生産に大きく影響しうることが示唆された。
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