2005 Fiscal Year Annual Research Report
北太平洋亜熱帯反流域の特異な海上風分布に関する研究
Project/Area Number |
17740305
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
小橋 史明 東京海洋大学, 海洋工学部, 助教授 (80377077)
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Keywords | 亜熱帯前線 / 人工衛星観測 / 大気海洋相互作用 / 高解像度大気海洋結合モデル |
Research Abstract |
北太平洋中緯度の海上風場は,大局的には亜熱帯高圧帯の北側を吹く偏西風と南側を吹く貿易風とから成る風系として捉えることができ,この風系は時計回り(負)の回転で特徴付けられるが,亜熱帯循環系の中南部を東に流れる亜熱帯反流の海域には,反時計回り(正)の回転を示す風の場が存在することがこれまでの研究で指摘されていた.本研究は,人工衛星観測資料と高解像度大気海洋結合モデルの出力資料を用いて,この亜熱帯反流域の特異な風分布の実態と成因を調べた.衛星観測資料の解析から,正回転を示す風の場はおよそ亜熱帯反流が存在する20°-26°N,130°E-160°Eの東西に広がる海域に見られ,亜熱帯前線と呼ばれる海面水温が水平方向に大きく変化する水温前線の暖水側に沿って現れることがわかった.亜熱帯前線には明瞭な季節変動があり,冬季に出現し春季に最も強くなり夏季に消滅する.正回転の風の場は,亜熱帯前線が強化する春季(4-5月)にのみ見られ,亜熱帯前線と密接に関係していることを示していた.この特異な風の場は,風の正回転だけでなく風の収束とそれに起因すると考えられる降水帯を伴っていることがわかった.特異な風の場は数値モデルにも見られ,その特徴も観測と整合していた.モデル資料を用いて,特異な風の場がどのように形成されているのかを調べた.その結果,風の正回転および収束は亜熱帯前線の暖水側に沿って出現する海面気圧の低圧偏差に応答して生じていることがわかった.この気圧偏差は,亜熱帯前線によって駆動された大気境界層の変動に起因していると考えられるため,来年度は,モデル資料の詳細な解析を引き続き行い,亜熱帯前線が大気境界層にどのような影響を及ぼしているのか調査し,亜熱帯反流域の特異な風分布の成因の全体像の解明を目指す.
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