Research Abstract |
30〜25億年前の地殻で構城された東ダルワールクラトンは,33〜27億年前の地殻から構成された西ダルワールクラトンに付加したものと考えられており,ウル大陸中央部における沈み込み帯の広がりおよびその特徴を解明する上で重要な地域である.東ダルワールクラトンは,少量の緑色岩類を伴い,沈み込み帯に関連する噴出岩類が存在する.しかしながら,東ダルワールクラトンの大部分を占める,花崗岩,トーナル岩質・トロニエム岩質花崗岩類(TTG)などの,酸性深成岩類と沈み込み帯との関連性は直接明らかにされておらず,沈み込み帯の広がりやその特徴について,未解明な問題が多い.東ダルワールクラトンの酸性深成岩類には,形成とほぼ同時期に貫入した中性〜塩基性岩脈が存在し,これら岩脈と酸性深成岩類の,Sr,Nd,Pb同位体比および微量元素組成データは,上記の問題解明には必要不可欠である.本年度は,西ダルワールクラトン東部に沿った,東ダルワールクラトン内,南北500Km,東西300Kmの範囲において酸性深成岩類に貫入する中性〜塩基性岩脈の調査および試料採取を行った. 調査範囲西部は,Closepet花崗岩が,東部にはTTGが分布している,また,地殻形成深度は調査範囲の北部から南部にかけて深くなり,垂直距離で10-13kmの深度差がある.このため,南北方向1セクション,東西方向2セクション(北部セクション,南部セクション)を決定し均等な試料採集を行った.調査範囲ほぼ全域において,花崗岩あるいはTTGに貫入する,斑レイ岩質,ドレライト質,閃緑岩質,ランプロファイヤー質岩脈が確認された.岩脈は幅数10センチ規模のものから数10メートル規模のものまで多様である.岩脈の多くは,シンプルトニック岩脈状の産状であることから,非貫入岩体固結時期と同時に貫入したものと考えられる.試料採取は65地点,122試料の採取を行い,日本への運送が完了した.現在,採取試料の整理および記載が進行中である.
|