Research Abstract |
該当年度においては,形態上に認められる機能的特性を把握する目的として,礁性三葉虫種群のの典型的な形態タイプのイレニモルフ種群の一種を検討対象とし,その呼吸領域の相対成長様式を検討した.三葉虫の頭部や尾部といった各体区分や、それらの体区分間において,ある生理的器官の成長率とその相違関係を定量的に求めた.また,三葉虫類と比較的近縁とされる現生力ブトガニ類についても,呼吸領域である鰓の総面積,鰓葉枚数,平均面積/1鰓葉と乾燥体重との相対成長様式を明らかにし,現生生物との比較検討対象とする準備を整えた.この結果については,過去に行われたカニ類での同様の研究と比較することで,現生の海生節足動物の呼吸領域に関する相対成長様式の一般化を行えたため,論文投稿を行った. イレニモルフ種は,その外骨格パーツがすべて連結した完全体の状態で産出することは極めて稀である.今回検討対象としたStenopareia oviformisについては,完全体21個体,体区分一部欠損5個体,保存良好の頭部および尾部のみ各40強の個体数を検討する機会を得る事ができ,生物体全体における形態の変化傾向を詳細に捉えられることが初めて可能となった.検討個体のサイズ範囲は,長さが3倍強の範囲をもつ.その結果,頭部中葉部の後端の幅に対して,尾部の呼吸領域の表面積は等成長,神経,筋肉,消化系が収まる尾部中葉の体積換算は劣成長,肺静脈に相当するダビュラーの体積は優成長となる結果を得た.この結果は,尾部の体区分においては,このイレニモルフ種の活発性が成長とともに減少傾向にあることを示唆するに至った.
|