2006 Fiscal Year Annual Research Report
硫黄安定同位体比を用いた大気中硫化カルボニルの物質収支解明
Project/Area Number |
17740356
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
豊田 栄 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 助手 (30313357)
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Keywords | 硫化カルボニル / 硫黄安定同位体比 / 高感度同位体比測定法 |
Research Abstract |
硫化カルボニル(COS)は大気中硫黄の物質循環において重要な役割を担っている気体状硫黄化合物であり、成層圏においては硫酸エアロゾルの起源物質として、大気の太陽光反射率(アルベド)や下部成層圏でのオゾンの消長などの化学に間接的に関与している。本研究は、COSの硫黄の安定同位体32S、33S、34Sの相対存在度を高感度・高精度で測定する方法の開発、およびこれを指標として、COSの種々の発生・消滅過程の寄与を明らかにし、その物質収支を解明することを目的としている。本年度は以下の成果が得られた。 A.COSの高感度硫黄同位体比計測法の開発 COSを直接質量分析計に導入して34S/32S、33S/32Sを求めるための基礎実験を行った。真空ラインおよびガスクロマトグラフから成る高濃度COSの分離・精製システムを製作し、市販のCOS(不活性ガスで濃度約20%に希釈されたものしか入手できない)を精製した。これにより不純物として含まれるCOS以外の硫黄化合物を除くことに成功した。また、元素状硫黄と一酸化炭素(CO)の反応によるCOS合成と精製も行った。精製したCOSを質量分析計に導入し34S/32S、33S/32Sを測定したところ、同位体組成が等しい試料間の相対測定において0.05‰以下の精度が得られた。同位体組成の異なる試料間の相対測定においては、測定値に経時変化が見られたので、測定条件を詳しく検討した。大気・水などの環境試料を測定するための分析システムを設計し、ガスクロマトグラフなど実験機材の準備を進めた。 B.COSの光化学的消滅過程における硫黄同位体分別係数の測定 Aと並行して、COSの主要な消滅過程である光分解を模擬する実験系の製作および基礎実験を行った。
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