2005 Fiscal Year Annual Research Report
室温から極低温までのピコ・フェムト秒蛍光分光による光合成反応初期過程の研究
Project/Area Number |
17750010
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柴田 穣 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助手 (20300832)
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Keywords | アンテナ / 蛍光アップコンバージョン / BLUF / ストリークカメラ |
Research Abstract |
fs蛍光アップコンバージョンシステムの立ち上げ、最適化を行った。そのための光学部品、軸外し放物面鏡、和周波発生用BBO結晶、光学遅延ステージ、偏光板、分光器、光電子増倍管、フォトンカウンタや、パルス幅を測定するオートコリレータを購入し、fs蛍光測定システムを立ち上げた。光合成系を対象とする本研究では、励起波長を変えることの効果を見ることは本質的である。460nmでの励起では、植物の光合成系のアンテナタンパク質のみに含まれるクロロフィルbを選択的に励起し、400nm励起では、全ての色素-タンパク質複合体に含まれるクロロフィルaを励起する。つまり、2つの励起波長を用いることで最初に生成する励起状態として2つの異なるものを用意することが可能となる。効率的に励起波長依存性の測定を行うため、上で述べたシステムの最適化は、全ての発振波長において行った。こうして立ち上げたシステムについて、17年度後半より実際の測定を行った。紅色光合成細菌のアンテナ、LH2の蛍光ダイナミクスを測定し、800nm付近に吸収ピークを持つB800から、850nm付近に吸収ピークを持つB850への励起エネルギー移動の速度を測定した。その結果、〜1psというエネルギー移動速度を求めた。また、フラビン色素を発色団とする青色光センサーと考えられているBLUFタンパク質の、高速蛍光ダイナミクス測定を行った。このタンパク質の場合、光励起により30秒程度の遅い時定数を持つ光反応サイクルに入るため、測定中に反応サイクル途中の中間体が蓄積されるという問題があった。今後、励起強度依存性を測定したり、試料を大量に精製してフローしながらの測定を行って、中間体への蓄積のない状態の測定を行う。
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