2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17750012
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 啓文 京都大学, 工学研究科, 助教授 (70290905)
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Keywords | RISM-SCF / PCM / 電子状態理論 |
Research Abstract |
溶媒和を扱う種々の理論は、これまでの「開発期」を経て、実験研究者を含めて広く応用される段階に入りつつあると考えられる。しかしながら、従来これらの理論は独立に発展を遂げて来たために、それぞれの利点・欠点を相対的に評価することは全くなされていない。特に実験的観測が難しい物理量については、理論間に様々な齟齬が残されていると予想される。この研究課題では、溶媒和理論として代表的なPCMとRISM-SCF/MCSCF法を中心に取り上げ、各方法を徹底的に比較検討するとともに、最終的にはこれらの結果を踏まえた"究極的"な新理論の構築を目指すことを目的としている。 本年度は、どのような条件下でPCMおよびRISM-SCF/MCSCF法がそれぞれ適切であるかを種々の物理化学的な観測量について二つの理論を用いて計算し、比較検討を行った。昨年度から行ってきたイタリアのグループとの共同研究で、実際に観測量として重要である溶媒配置エネルギー(λ)を取り上げて、溶液中のデューロキノンおよびテトラメチルベンゼンについてPCMとRISM-SCF/MCSCF法でそれぞれ計算を行い、比較検討した結果、後者では一般にλが非常に大きく見積もられる傾向にあることが分かった。また溶媒和構造についても詳細に調べ、学術論文として発表した。 ところで、こうした溶媒和理論を考える際に、溶質溶媒間の相互作用においてもっとも本質的なのは静電相互作用である。一般に、静電場は多極子展開でよく記述され、その第一項となる双極子モーメントは非常に重要な意味を持っている。こうした観点から、注目する分子が周囲につくる静電場を効率よく計算するために、従来からのMulliken電荷分布解析に類似した方法で、線型分子の電気双極子モーメントを厳密に再現できる新しい電荷分布決定法を開発した。新しい方法は、一電子積分を使うことで一意に電荷を決定することができ、また、旧来からの類似法のようにCPHF方程式などを解く必要もないなど、様々な利点を有している。
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