2006 Fiscal Year Annual Research Report
フラーレンを導入したフタロシアニン誘導体の合成と電子状態
Project/Area Number |
17750029
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福田 貴光 東北大学, 高等教育開発推進センター, 助手 (40344741)
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Keywords | フタロシアニン / フラーレン / 電子状態 / 磁気円偏光二色性 / 分子軌道 / 芳香族色素 / 炭素クラスター |
Research Abstract |
本研究は芳香族有機色素として広く実用化されているフタロシアニンの誘導体を用いた,一連のフタロシアニンーフラーレン(C_<60>)複合体を合成し,その構造と電子状態に関する知見を得ることを目的としたものである. 平成18年度はテトラアザクロリンと呼ばれるフタロシアニン類縁体を用いたテトラアザクロリンーC_<60>複合体が示す特異な現象の一つである,「導入置換基によって電子状態が大きく変化する」点に関する詳細な知見を得ることを目標に研究を展開した.磁気円偏光二色性分光法,サイクリックボルタンメトリー等の手法により実験データを得,密度汎関数法による電子状態計算の結果と実験データとを合わせた解析により,得られた複合体が示す電子状態の特異性について,構成ユニットの分子軌道エネルギーシフトと,C_<60>の球状構造に由来する「平面-球面間の電子雲の重なり」という観点から観測結果への理論的な根拠を与えることができた. さらに,これまでとは異なる新しいタイプのフタロシアニン-C_<60>複合体の合成も行った.これはフタロシアニンの芳香環内にピリダジン部位を導入した前駆体を初めに合成し,次いでC_<60>とピリダジン部位との環化付加反応により複合体を合成するものである.この合成手法により,合成が難しかった亜鉛錯体の合成が可能となり,複合体の光物理過程の研究を展開することができるようになった.現在までのところ,還元種の分光学的測定,密度汎関数法計算,蛍光寿命,およびナノ秒・ピコ秒過渡吸収等の測定により,この種の複合体としては極めて珍しく,複合体のLUMOがC_<60>中心ではなく,フタロシアニン中心であることが明らかとなっている.この結果はフタロシアニンとC_<60>との分子軌道間相互作用を考慮した分子設計により初めて達成できたものであり,今後これらの複合体の電荷分離スイッチング,エレクトロクロミズム等への機能発展が期待できる.
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