2005 Fiscal Year Annual Research Report
キャリア輸送性を有する新規マクロサイクルの合成研究
Project/Area Number |
17750037
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
小野 克彦 名古屋工業大学, 工学研究科, 助手 (20335079)
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Keywords | 構造・機能材料 / 合成化学 / 先端機能デバイス / 有機導体 |
Research Abstract |
有機EL素子の研究において、キャリア輸送材料の開発は非常に重要であり、様々な有機分子の合成研究が活発に行われている。この中で、分子構造により分子集合状態を制御して物性を調査する研究が注目を集めている。そこで私は、マクロサイクルの環状構造に着目し、マクロサイクル(環状)分子と非環状分子の合成研究を行った。 具体的には、環状および非環状ビス(2,5-ジフェニル-1,3,4-オキサジアゾール)の合成を行い、その性質を調査した。これらの分子は吸収スペクトルおよびサイクリックボルタンメトリー測定においてほとんど差を示さず、電子的性質は同じであった。一方、物理的性質の評価として示差走査熱量測定を行った。非環状分子では63.2℃にガラス転移、245.8℃に融解が観測されたのに対し、環状分子では460℃まで相転移は起こらず、この温度で分解が始まった。これはマクロサイクル構造によって強いπ…π相互作用を有する分子配列が構築された結果であり、分子構造の違いが物理的性質に大きく影響を及ぼしたことを示している。これらの化合物を有機EL素子の電子輸送材料に用いたところ、マクロサイクルは電子をよく通すものの、ホールも比較的流しやすいことが分かった。一方、非環状分子では電子のみを選択的に通し、ホールブロック性の高い分子であることが明らかになった。これらの結果は分子構造が分子集合状態を制御し、EL発光効率に影響を与えることを意味している。また本研究で得られた成果は、今後のキャリア輸送材料の分子設計指針として役立つと期待される。実施計画書記載のヘテロ原子の導入および非平面型マクロサイクルの合成研究は、現在進行中である。
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