2005 Fiscal Year Annual Research Report
超長寿命・高エネルギー電荷分離状態を利用した有機光触媒反応システムの開発
Project/Area Number |
17750039
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大久保 敬 大阪大学, 大学院・工学研究科, 特別科学研究員 (00379140)
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Keywords | 電子移動 / 光化学 / 電荷分離 / パイ電子系 / フタロシアニン / ドナー・アクセプター連結系 / エネルギー移動 / 電荷再結合 |
Research Abstract |
本年度は、ドナー・アクセプター連結系分子を用いて電荷分離状態を得るには、最初の光誘起電荷分離過程が単電子移動による電荷再結合過程よりもはるかに速く起こる必要がある。そのためには電子移動の再配列エネルギー(λ)を小さくすれば良い。その場合λが小さくなると、電荷再結合過程の速度は電荷分離過程の速度よりもはるかに遅くなることが可能となる。そこで、2次元のパイ電子系を有するポルフィリンや、フタロシアニン、ペリレンジイミドの電子移動特性について検討を行った。その中でも、光合成反応中心における電荷分離のモデルとしてフタロシアニンの吸収スペクトルは光合成で使われているバクテリオクロロフィルに近いという点から最近特に注目を集めている。そこで、電子供与体として亜鉛フタロシアニン、電子受容体としてペリレンジイミドを連結させた分子の、エネルギー移動および電子移動ダイナミクスについて研究を行った。 その結果、亜鉛フタロシアニン-ペリレンジイミド連結分子(ZnPc-PDI)の脱酸素ベンゾニトリル溶液に530nmのレーザー光照射を行いペリレンジイミド(PDI)部位を選択的に光励起すると、2マイクロ秒後に3重項励起状態亜鉛フタロシアニン(^3ZnPc^*)に特徴的な過渡吸収帯が観測された。その後、^3ZnPc^*の吸収帯が減衰するに伴って^3PDI^*の過渡吸収帯の増大が観測された。これは一重項励起状態では^1PDI^*から^1ZnPc^*へエネルギー移動が起こり、項間交差後^3ZnPc^*からPDIへのエネルギー移動が起こっていることを示す。この系にマグネシウム過塩素酸塩を添加し同様な測定を行うと、ZnPcからPDI部位への電子移動反応が進行し、電荷分離状態が観測された。過渡吸収スペクトルの減衰から電荷分離寿命を140マイクロ秒と決定することができた。これは、PDIラジカルアニオンのカルボニル酸素とマグネシウムイオンとの錯形成によって、電荷分離状態のエネルギーが^3PDI^*よりも低くなったためであると考えられる。PDIラジカルアニオンとマグネシウムイオンの錯体生成はESRで確認した。さらにマグネシウムイオンの替わりにさらにルイス酸性度の高いスカンジウムイオンを用いると、光照射をしなくても基底状態で電子移動反応が進行した。
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Research Products
(21 results)