2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17750041
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
入江 亮 九州大学, 大学院理学研究院, 助教授 (70243889)
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Keywords | 酸化的不斉カップリング / クロスカップリング / ビアリールカップリング / 不斉空気酸化 / 2-ナフトール / ビナフトール / 触媒的不斉合成 / サレンルテニウム錯体 |
Research Abstract |
2個のビナフトールを直結させた軸性キラル化合物クアテルナフチルジオール(QNOL)を鋳型として、新たなキラル4座配位子の合成とその遷移金属錯体を用いる不斉触媒反応の研究を展開した。これまでに、QNOLにアゾメチン基を導入した新規シッフ塩基を配位子とする銅錯体が、2-ナフトールの空気酸化的不斉カップリング反応を触媒することが分かった。しかしながら、反応速度、不斉収率共に極めて不十分であった(反応時間4日、収率20%、不斉収率30%ee)。一方、これまでに可視光照射により活性化されるキラルなサレンルテニウム錯体がこの反応を効率良く触媒することを既に報告しているが、この反応の基質適用範囲を検討する過程で3位にメトキシ基を有する基質の反応速度が著しく遅いことを見出した。近年、高エナンチオ選択的な酸化的不斉ビアリールホモカップリング反応の研究が活発に行われているが、酸化的不斉クロスカップリング反応の報告例は極めて少ない。そこで、この課題に上記の知見を応用したところ、各種3位無置換2-ナフトール類(A)と3,6-ジメトキシ-2-ナフトール(B)との組み合わせで高クロス選択的不斉ビアリールカップリング反応を達成することができた(A-B : A-A : B-B=>99.9:<0.1:<0.1)。興味深いことに、6-メトキシや3-エチル置換体を用いると、クロス選択性は顕著に低下した。これより、3-メトキシ基の効果は少なくとも単純な立体あるいは電子的な要因によるものではないことが示唆された。このクロス選択性発現のメカニズムについて詳細はなお不明であるが、現在のところルテニウム錯体に補足された基質A由来のナフトキシラジカル種に対して、より電子豊富な基質Bが優先して反応する(HOMO-SOMO相互作用)ためと推定している。このことは,A-BとA-Aの不斉収率(57%ee)がほぼ等しいことからも支持された。
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