2005 Fiscal Year Annual Research Report
カルボン酸会合状態を利用した不斉酸素酸化反応の選択性制御
Project/Area Number |
17750042
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
藤田 守文 兵庫県立大学, 大学院物質理学研究科, 助手 (00275314)
|
Keywords | 合成化学 / 分子会合 / 不斉合成 / 過酸化物 / 酸素 |
Research Abstract |
光学活性な乳酸をナフトールに立体特異的に導入し反応基質の合成をおこなった。また乳酸以外にも数種類のヒドロキシカルボン酸を導入した基質を合成した。これらの基質を用いて一重項酸素との反応を行ったところ、ナフタレン面を区別して一重項酸素が付加し、光学活性ヒドロペルオキシドを得ることができた。一重項酸素の付加の面選択性は、反応温度を低くする、酢酸を添加する、もしくは反応基質濃度を高くすると向上した。この選択性の変化は基質のカルボン酸部位が会合状態を形成すると一重項酸素付加の立体障害として有効に機能するためではないかと考えた。カルボン酸基質の^1H NMR測定を行い、会合の平衡定数を求めたところ、1.5x10^2M^<-1>であり、酸素付加の面選択性が変化する様子を合理的に説明できる。また、基質と酢酸との会合の場合も、ほぼ同じ平衡定数をもっていた。低温下での基質の^1H NMR測定を行ったところ、カルボン酸添加時と同じ方向に化学シフトが変化するのが観測できた。これらの結果から、カルボン酸会合状態が一重項酸素付加の面選択性と密接な関係にあることを示すことができた。 次に、低温NMRを用いて、反応中間体の検出を行った。通常ナフタレン化合物と一重項酸素との反応ではエンドペルオキシドを与えることが知られている。上記のヒドロペルオキシド生成物を与える反応系においても、エンドペルオキシド中間体を-90℃において検出でき、その温度で速やかにヒドロペルオキシドに変換する様子を観測できた。したがって、カルボン酸部位は会合状態の形成によって面選択性を向上させるだけでなく、生成するエンドペルオキシドを効率よくヒドロペルオキシドに変換する役割も担っていることがわかった。
|