2005 Fiscal Year Annual Research Report
低温マトリックス反応場を利用した共役系拡大型ビスアリーン生成に関する研究
Project/Area Number |
17750045
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
佐藤 正健 独立行政法人産業技術総合研究所, 光技術研究部門, 研究員 (70357151)
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Keywords | 活性反応中間体 / アリーン / 高歪化学種 / レーザー光分解 / 低温マトリックス分光 |
Research Abstract |
ベンザインをはじめとする芳香環に三重結合を導入したアリーン類はその歪にもとついた反応性を示す一方、その特異な歪構造から構造化学的観点からも注目を集め、直接観測による詳細な構造の解明が展開してきた。芳香環に2個の三重結合を導入したのがビスアリーンであり、より大きな歪をもつ化合物である。本研究は、拡張した共役系母骨格(ビフェニレン、アントラセン)に2個の三重結合を導入したビスアリーンを生成・捕捉し、その構造を解明するとともに、その開環反応による新規な鎖状共役化合物の生成についても明らかにすることを目的とした。アントラセンを母骨格とするビスアリーンの前駆体であるアントラセンテトラカルボン酸二無水物を名古屋工業大学の大北雅一先生に提供していただき、低温場光分解実験および関連化合物の量子化学計算手法による検討を実施した。前駆体の分子量の増大にともないマトリックス生成が困難になるが、装置構成、および、実験条件を最適化することにより前駆体が良好に分散された6.7Kのネオンマトリックスを作製することができた。このマトリックス試料に対して種々のレーザー照射条件を検討した結果、選択光分解反応によってアントラセン骨格に三重結合を1個導入した新規分子が生成することを実験、理論計算結果の比較検討により実証できた。この新規分子をさらに分解することによる、2個目の三重結合を導入したビスアリーンの生成は確認できなかったが、開環反応生成物のIR吸収帯位置を確定できた。開環生成物はアセチレン部位を有する化合物であることが示されている。これらの成果について学会発表2件(国内1、国際1)を行った。開環生成物の詳細な分子構造およびその反応機構については9種類の予測構造に対する計算化学的検討とナフタレン母骨格の参照化合物の反応解明を通じて鋭意検討を進めており、その成果については近日中に論文発表する予定である。
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