2005 Fiscal Year Annual Research Report
特定の光条件下で誘起される配位子脱離反応を利用した新規光機能性錯体の創製
Project/Area Number |
17750047
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石井 和之 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (20282022)
|
Keywords | フタロシアニン / 光線力学的療法 / ルテニウム錯体 / 光化学 / 一重項酸素 / 一酸化炭素 / 深部治療 |
Research Abstract |
本研究では、光線力学的治療(PDT、腫瘍組織に蓄積した光増感剤を光照射し、生成した一重項酸素、O_2(^1Δ_g)が腫瘍組織を攻撃)に現在用いられている光増感剤の問題点を改善するため、特定の光条件下(パルスレーザーなど)においてのみ、配位子脱離反応を起し、光物性を制御できる新規錯体の創製を目指す。 本年度は、軸配位子としてCOを持つRuフタロシアニン(RuPc(CO))、ナフタロシアニン(RuNc(CO))錯体の光化学、光励起状態について研究を行った。その結果、(1)RuPc(CO)、RuNc(CO)錯体は、生体組織透過性の高い650nm、720nmのパルスレーザーで脱CO反応を起こすこと、(2)脱CO反応後、吸収スペクトル励起波長における吸収強度が大きく減少することなどが明らかとなった。この電子吸収スペクトルの変化は、CO軸配位子脱離に伴うMLCTエネルギーの変化で説明された。 DPPCリポソーム中の電子吸収スペクトルから、膜内のRuPc(CO)、RuNc(CO)錯体・電子状態を詳細に調べた。その結果、(1)RuPc(CO)錯体はリポソーム中で単量体を形成すること、(2)RuNc(CO)は、DPPC添加量に依存して、単量体や会合体を形成することなどを示した。RuPc(CO)、RuNc(CO)単量体、RuNc(CO)会合体の癌細胞HeLaに対する毒性・光毒性を調べ、(1)RuNc単量体の光毒性は、RuNc会合体のそれより高いこと、(2)RuPc(CO)、RuNc(CO)単量体はそれぞれ、0.3-1μM、1-2μMにおいてPDTへ利用可能であることなどを明らかとした。 これらの結果から、「定常光照射で表面部位を治療」→「パルスレーザー励起で、表面部位の吸収をなくす」→「定常光照射でより深部を治療」という腫瘍深部治療に関する新規概念を提案した。
|
Research Products
(2 results)