2006 Fiscal Year Annual Research Report
特定の光条件下で誘起される配位子脱離反応を利用した新規光機能性錯体の創製
Project/Area Number |
17750047
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 和之 東京大学, 生産技術研究所, 助教授 (20282022)
|
Keywords | フタロシアニン / 光線力学的療法 / ルテニウム錯体 / 光化学 / 一重項酸素 / 一酸化炭素 / 深部治療 |
Research Abstract |
本研究では、光線力学的治療(PDT、腫瘍組織に蓄積した光増感剤を光照射し、生成した一重項酸素、O_2(^1Δg)が腫瘍組織を攻撃)に現在用いられている光増感剤の問題点を改善するため、特定の光条件下(パルスレーザーなど)においてのみ、配位子脱離反応を起し、光物性を制御できる新規錯体の創製を目指し、研究を行った。 軸配位子としてCOを持つRuフタロシアニン(RuPc(CO))、ナフタロシアニン(RuNc(CO))錯体について研究を行い、(1)RuPc(CO)、RuNc(CO)錯体は、生体組織透過性の高い650nm、720nmのパルスレーザーで脱CO反応を起こすこと、(2)脱CO反応後、吸収スペクトル励起波長における吸収強度が大きく減少すること、(3)RuPc(CO)、RuNc(CO)単量体の癌細胞HeLaへの毒性・光毒性を調べ、0.3-1μM、1-2μMにおいてそれぞれ光線力学的治療へ利用可能であることなどを明らかとした。電子吸収スペクトルの変化は、量子化学計算を行うことにより、定量的に評価された。また、パルスレーザー選択的光ブリーチング反応が癌細胞HeLa内でも起こることを明らかとした。これらの結果から、「定常光照射で表面部位を治療」→「パルスレーザー励起で、表面部位の吸収をなくす」→「定常光照射でより深部を治療」というスキームを利用した腫瘍深部治療に関する新規概念を提案した。研究代表者は、この研究成果を、光医学光生物学会で口頭発表するとともに、論文としてまとめ、現在投稿中である。 また、パルスレーザー選択的光反応を開拓するため、自己集合型フタロシアニン二量体(ZnPcPy)_2の過渡吸収スペクトルを解析し、パルスレーザー二段階励起を可能とする"励起状態Q帯"を観測することに初めて成功した。スペクトルの起源を詳細に解析し、その研究成果は、Chem.Phys.Lett.に掲載された。
|
Research Products
(4 results)