2006 Fiscal Year Annual Research Report
複合機能性スピンクロスオーバー錯体における光誘起物性変換
Project/Area Number |
17750048
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
二瓶 雅之 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 講師 (00359572)
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Keywords | スピンクロスオーバー錯体 / 光応答性分子 / 複合系 / 多重安定性 |
Research Abstract |
鉄(II)スピンクロスオーバー錯体は熱・光などの外場によって低スピン・高スピン状態を可逆に変換可能である。特に光によるスピン状態の可逆な変換(LIESST、Light Induced Excited Spin State Trapping)は、光スイッチなどの分子デバイスへの応用が期待される。LIESST現象を示す分子に他の機能部位を導入することができれば、光などの外場による物性の制御、新規な物性の発現が期待される。本研究では、前年度に合成した分子内にフェロセニル基をもつ三座配位子dpPOCOFcおよびdppCCFcをもつ鉄二価錯体の物性について詳細に検討した。dppOCOFcをもつ錯体[Fe^<II>(dppOCOFc)_2](BF_4)_2・H_2O(1)は、転移温度380Kをもつスピンクロスオーバー錯体であり、5Kにおける光照射によりLIESST挙動を示す。この特異なLIESST挙動の機構を解明する為、準安定高スピン状態のX線構造解析を行った結果、低温では分子間相互作用により特異的に高スピン状態が安定化されることが解った。一方、dppCCFcから得られる錯体[Fe^<II>(dppCCFc)_2](BF_4)_2・2Et_2O(2・2Et_2O)は、錯体カチオンとBF_4^-が形成する安定な三次元ネットワーク構造もち、一つのジエチルエーテル分子を結晶性を損なうことなく可逆に出し入れすることが解った。さらに、溶媒分子の出し入れに伴いスピンクロスオーバー錯体と高スピン錯体の可逆な変換を示す。すなわち、2・nEt_2Oは溶媒分子の出し入れにより単結晶性を保ちつつ磁性を大きく変える全く新しい多孔性材料であることを明らかにした。
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