2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17750056
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山内 美穂 九州大学, 大学院理学研究院, 助手 (10372749)
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Keywords | 金属ナノ粒子 / 水素吸蔵合金 / 合金 / コア・シェル型 / in situ XRD / 放射光 |
Research Abstract |
地球上に水として無尽蔵に存在し、燃焼しても水のみを生成する水素は、持続型社会に必須なエネルギー源である。しかし、エネルギー密度が低い水素ガスを安全にかつ高密度に貯蔵・運搬するのは困難であるなど水素中心のエネルギー社会が現実となるには問題が山積みとなっている。最も安全な水素貯蔵法である水素吸蔵合金に貯蔵する方法では、水素の貯蔵量は頭打ちになっており、新たな物質が必要となっている。申請者は、水素吸蔵媒体として「ナノ粒子」に注目した。金属ナノ粒子は直径数〜数百nm程度、数十個〜数百万個の原子からなる凝集体である。金属の水素吸蔵特性にはその電子状態が大きく関係するため、原子・分子でもバルクでもない状態にあるナノ粒子は水素吸蔵体として従来のバルク金属にはない特性を示すことが期待できる。本申請研究では、金属ナノ粒子を基盤とする高密度水素吸蔵体の創製を目的とする。 Pdナノ粒子の外側にPtのシェルを持つPd/Ptナノ粒子を水素ガス1気圧、373Kでアニールすることで、バルクにはない新規な構造を有する固溶体型PdPt合金ナノ粒子を合成した。また、Pd/Pt合金ナノ粒子の水素吸蔵量を水素圧力組成等温線の測定を行ったところ、バルクでは水素を吸蔵しないPtを含めた一金属当たりの水素の吸蔵量は、コア部のPdナノ粒子よりも大きいことが明らかとなった。Ptナノ粒子およびPd/Ptナノ粒子が高密度に水素吸蔵するメカニズムを明らかにするために、SPring8のBLO2B2において、水素圧力を変化させながらin situ粉末X線回折を行った。室温、真空下において測定したパターンは、コア部のPdおよびシェル部のPtそれぞれからの回折の重なりであることがわかった。室温にて一気圧まで水素圧力を加圧したところ、回折パターンに変化は起こらなかった。水素圧力組成等温線の結果からPd/Ptナノ粒子は室温でも水素を吸蔵することがわかっている。通常、水素吸蔵合金が水素吸蔵する場合、その格子は膨張して回折ピークは低角度側にシフトする。したがって、この粒子は構造変化をせずに水素吸蔵する特異な挙動を示すことがわかった。また、373Kに加熱して水素を加圧し、減圧していくと、加圧過程では変化が観られないが、減圧過程では、PdとPtの二つのfcc格子が重なったパターンから単一格子のパターンへと変化することがわかった。この結果より、Pd/Ptの構造変化は373K程度の過熱化で水素を加圧した後、減圧する過程で起きることが明らかとなった。
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Research Products
(3 results)