Research Abstract |
近年Co酸化物における初めての超伝導体が発見され,この化合物の結晶構造における三角格子CoO_2層のスピンフラストレーションが,超伝導発現に寄与していると考えられている.本年は,層状無機セラミックス化合物の中で,特にBi_2Sr_2Co_2O_yに着目した.この化合物は,Co酸化物超伝導体と同様の三角格子CoO_2層を有する.したがってCoO_2層のキャリアー濃度や結晶構造を変化させることにより,三角格子CoO_2層の電子状態を制御できると考えられる.そこでCoO_2層のキャリアー濃度を変化させるために元素置換を行い,さらに,CoO_2層間距離を制御するためにヨウ素,臭素をインターカレートした試料を作成し,その物性を詳細に評価し,構造と物性の関連について考察した. まずPbを置換した試料Bi_<2-x>Pb_xSr_2Co_2O_yにおいて,磁気・電気的特性の評価より,Pbを置換することにより,CoO_2層にキャリアーがドープされたことを確認した.次にBi_2Sr_2Co_2O_y相および,元素置換された化合物において,適切な反応条件下においてヨウ素および臭素がインターカレートされることを確認した.インターカレーションによりCoO_2面内構造は変化せず,層間距離のみ大きく増加することが分かった.得られた試料の磁気・電気的特性の測定結果より,ヨウ素をインターカレートした試料ではCoO_2層の二次元性が増加し,金属的になったと考えられる.また臭素をインターカレートした試料では,電気抵抗率の絶対値はホスト物質,ヨウ素をインターカレートした試料よりも小さくなり,さらに低温において金属-半導体転移が見られた。これらの結果から,CoO_2層間に臭素を含むブロック層を介して結合が生じていると考えられる.金属状態における電気抵抗率は金属-半導体転移以上の温度でT^2に比例しており,詳細な解析の結果,この領域において電子相関が強められていることが明らかとなった.このような電子相関が強く金属的な領域では,新奇な物性の発現が期待され,今後詳細な物性評価が必要であると考えられる.
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