Research Abstract |
これまで明らかにした,チオアミドの銅触媒存在下における酸素酸化による酸化的脱硫化を経る分子内環化反応について,さらに基質適用範囲の検討を行なった。 この結果,N-(2-アミノフェニル)チオアミドおよびN-チオアシル1,2-ジアミンも基質として用いることができ,それぞれ対応するイミダゾリン,キノリジンを良好な収率で与えることを明らかにした。一方,基質N-チオアシル1,2-ジアミンの合成では,対応する原料N-ベンジルチオアミドとブチルリチウムから発生させた,チオアミドジアニオンとイミンとの反応が,反応温度を下げるだけで,高ジアステレオ選択的に進行することが明らかになった。すなわち,本研究において達成した触媒的脱硫化を含む,チオアミド特有の反応性を利用した,短段階ジアステレオ選択的イミダゾリン合成法の開発に成功した。イミダゾリンは各種生理活性物質中に広く存在しており,その端的な構築法達成は重要な成果である。 さらに,本研究中に得られたイミダゾ[1,5a]ピリジンの発光材料としての利用を鑑み,その官能基導入反応を検討した。この際,パラジウム触媒による,芳香族炭素-水素結合の直接アリール化反応を発見した。この反応では,通常同様の反応にボスフィン配位子が必要であると考えられていたのに対し,ジイミン系配位子がより高度に反応を活性化する新たな知見を与えた。またこの反応を用いることにより,これまで合成できなかったイミダゾ[1,5a]ピリジン誘導体合成が可能になり,より多様な発光特性を持つイミダゾ[[1,5a]ピリジン誘導体ライブラリを構築することに成功した。
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