2006 Fiscal Year Annual Research Report
相溶性高分子混合物の表面偏析に及ぼすブロック共重合化の影響
Project/Area Number |
17750108
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川口 大輔 名古屋大学, 大学院工学研究科, 助手 (70362267)
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Keywords | 相溶性高分子 / 表面偏析 / ブロック共重合体 / ポリ(4-トリメチルシリルスチレン) / 中性子反射率 / 表面自由エネルギー |
Research Abstract |
高分子混合物の表面・界面における組成がバルクのそれと著しく異なっていることはよく知られているが、表面・界面における高分子鎖一本の形態を理解するまでには至っていない。これを明らかにするためには、重水素ラベルを施したような標識となる分子鎖を、高選択的に表面のみに偏析させる技術を確立することが重要である。本研究では、構成成分のブロック共重合化に着目し、分子鎖の表面に対する偏析力に及ぼすブロック共重合化の影響について明らかにすることを目的とする。 今年度は、相溶性高分子の組み合わせである重水素化PTMSS (dPTMSS)とポリイソプレン(PI)からなるブロック共重合体(dPTMSS-b-PI)を調製し、その膜の表面凝集構造について検討を行った。用いた試料の重量平均分子量は63kで、dPTMSSの体積分率は49%である。dPTMSS-b-PI膜の中性子反射率測定を行い、表面はdPTMSSが覆い、基板界面ではPIが選択的に濃縮することを明らかにした。これは、低表面エネルギー成分であるdPTMSSが表面に濃縮し、高表面エネルギ0成分であるPIがシリコン基板界面に濃縮することにより、系全体の自由エネルギーを最小化すると考えることで説明できる。膜表面におけるdPTMSSの濃縮層の厚さは5nm程度であり、dPTMSSブロック鎖の回転半径の2倍(7.8nm)よりわずかに小さかった。また、dPTMSS-b-PI中の各成分と同程度の分子量を有するdPTMSS/PIブレンド膜表面では、dPTMSSの濃縮層の厚さは10nm程度であった。以上の結果より、構成成分をブロック共重合化することにより、表面エネルギーの低い分子鎖の表面に対する偏析力が著しく低下することが明らかとなった。
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