2005 Fiscal Year Annual Research Report
走査トンネル顕微分光による有機伝導体における電荷秩序の実空間イメージング
Project/Area Number |
17750119
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
米山 直樹 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (80312643)
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Keywords | 有機伝導体 / 走査型トンネル顕微鏡 / 電荷秩序 |
Research Abstract |
1.結晶育成 有機伝導体θ型BEDT-TTF塩の比較的巨大(〜3mm長)でかつSTM測定に都合の良い平板形状の結晶育成に成功した。この塩は一般に針状結晶が得られやすいことが知られているが、どういった育成条件で試料形状が左右されるか、今後より詳しく調べる必要がある。 2.STM装置の改良 現行の自作STM装置では開口部(横からののぞき窓)が狭いため試料・探針セッティング時の微調整作業が容易でなかったことから、本科研費で新たにピエゾ素子を購入し、改良型STMヘッド部を設計・製作した。さらにセッティング作業では実体顕微鏡の頻繁な利用が必要なため、STM作業専用のものを購入した(設備備品)。これら実験設備の向上により作業効率を上げることが可能となった。 3.STM測定の結果 室温・大気圧中でのSTM測定により、Rb塩とCs塩にその電子状態の違いを反映すると思われる分子像の差違を両者の間に見出すことに成功し、その結果を国内学会等3件(すべて口頭発表)、国際学会2件(うち招待講演1件)において発表した。徐冷相Rb塩の低温STMでは電荷秩序状態で予想されるc軸方向倍周期構造を反映した分子像を得ることに成功した。有機導体における電荷秩序状態でのSTM観察の成功例としては、申請者の知る限りで世界初のものである。一方Cs塩では、温度が下がるにつれて、得られるSTM像がRb塩の室温で得られていた像と類似してくる傾向を見出し、これまで謎であったCs塩の安定な電荷秩序相の一つとして、縦ストライプ構造の存在が有力であることを示唆する結果を得た。
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