2006 Fiscal Year Annual Research Report
色素増感酸化チタンナノ結晶光電極界面における逆電子移動の機構解明と抑制
Project/Area Number |
17750187
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
柳田 真利 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等・研究員エネルギー技術研究部門, 研究員 (60358215)
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Keywords | 色素増感 / 酸化チタン / ナノ結晶 / 電子輸送 / 電子移動 / 電極界面 / 色素増感太陽電池 |
Research Abstract |
色素増感TiO_2ナノ結晶光電極においてTiO_2から電解液中のI_3^-への逆電子移動の抑止を達成するため、昨年度と同様に逆電子移動過程の機構解明を行った。種々の増感色素について色素増感太陽電池(DSSC)を作製し、TiO_2から電解液中のI_3^-への逆電子移動速度定数(TiO_2中の電子寿命(τ))を励起光変調光電圧分光法により求め、逆電子移動過程の増感色素依存性について検討した。下記の(1)と(2)の成果が得られた。 (1)増感色素を共吸着させたTiO_2中の電子輸送過程:励起状態の酸化電位(E_<ox>^*)が[NBu_4]_2[cis-Ru(Hdcbpy)_2(NCS)_2](N719 ; [NBu_4]^+=tetrabutyl ammonium cation ; H_2dcbpy=4,4'-dicarboxy-2,2'-bipyridine)より正にある[NBu_4]_2[cis-Ru(Hdcbiq)_2(NCS)_2](BQ ; H_2dcbiq=4,4'-dicarboxy-2,2'-biquinoline)をTiO_2上に吸着させたDSSCはN719よりτが短くなった。BQの還元電位(E_<red>)がTiO_2の伝導帯端(E_<cb>)より正にあるため、TiO_2中の電子がBQの還元を介して電解液中のI_3^-と反応するためと考えられる。またBQとN719をTiO_2上に共吸着させたDSSCでは少量のBQを吸着するだけでτが短くなり、短絡光電流密度と光開放電圧が減少した。DSSCの光電流-電圧特性やTiO_2中の電子の輸送過程は電子の拡散方程式で説明されている。BQとN719を共吸着させたTiO_2の系においても拡散方程式が適応可能とすると、電子はTiO_2中ランダムに動かず、BQへと優先的に移動し、I_3^-と反応することを示した。本成果は2本の論文にまとめた。 (2)増感色素に依存したTiO_2中のτ:、TiO_2中の電子がBQ様なルテニウム錯体を介して電解液中のI_3^-と反応する機構を明確にするため、基底状態の酸化電位(E_<ox>)が同じ錯体について、錯体を介する逆電子移動がE_<ox>^*とE_<red>のどちらに依存するかを検討した。錯体はβ-ジケトナート、NCSなどをドナー配位子といい、H_2dcbiq、H_2dcbpyなどをアクセプター配位子という。錯体のE_<ox>^*とE_<red>は一般にアクセプター配位子に依存する。またドナー配位子のみを変えることでE_<ox>とE_<red>は同じでE_<ox>^*のみが正にシフトする錯体ができる。E_<ox>^*とE_<red>が異なる錯体にっいてTiO_2上に吸着させτの測定を行うと、E_<ox>^*とE_<red>が正にシフトするのに伴いτが短くなった。E_<ox>^*のみが正にシフトした錯体をTiO_2に吸着させると、τはE_,ox>^*に依存しなかった。TiO_2中の電子が錯体の還元を介して電解液中のI_3^-と反応する機構は錯体のE_<red>に依存すると考えられる。本成果を論文にまとめている。 以上の成果を踏まえ、今後、増感色素に逆電子移動を抑止する機能を付与する試みを行う。
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Research Products
(2 results)