2005 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ規則構造を有する複合型リチウムイオン伝導体に関する研究
Project/Area Number |
17750198
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山田 博俊 長崎大学, 工学部, 助手 (10359961)
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Keywords | ナノ材料 / リチウムイオン伝導体 / コンポジット固体電解質 / メゾポーラス / 銀イオン伝導体 / 積層欠陥 / 空間電化層 / 非晶質化 |
Research Abstract |
本研究ではナノメートルサイズの貫通細孔を有するメゾ多孔性アルミナに、銀イオン導電体(臭化銀、ヨウ化銀)あるいはリチウムイオン導電体(ヨウ化リチウム)を充填することにより、ナノスケールでイオン導電体と絶縁体とが相互貫通したナノコンポジット固体電解質を合成し、そのイオン導電機構を詳細に調べ、超イオン導電体、特に応用面での需要が高いリチウムイオン導電体の開発を目指した。 充填の状況については窒素吸脱着等温線測定、透過型電子顕微鏡観察、幾何密度の測定により評価を行い、各イオン導電体が充填されていることが確認された。臭化銀、ヨウ化銀、ヨウ化リチウムいずれのイオン導電体を元とするナノコンポジット固体電解質においても、イオン導電率が上昇することが確認された。 イオン導電率の上昇度は、各イオン導電体により、違いが見られた。ヨウ化銀:メゾ多孔性アルミナ複合体の25℃におけるイオン導電率は、純ヨウ化銀と比較して約4桁高く、従来のモデルだけでは説明ができず、結晶構造の乱れが高いイオン導電率に寄与していると考えられた。 臭化銀:メゾ多孔性アルミナ複合体の25℃におけるイオン導電率は、純臭化銀と比較して3桁近く上昇した。イオン導電率の上昇は、空間電荷層モデルにあてはまることがわかった。 ヨウ化リチウム:メゾ多孔性アルミナ複合体の25℃におけるイオン導電率は純ヨウ化リチウムと比較して、約1桁上昇したが、理論的に期待される値よりも2-3桁低い。粉末X線回折及び示差走査熱量分析の結果から、細孔内部でヨウ化リチウムは非晶質化しており、非晶質相のイオン導電率が低いためであると考えられた。 以上より、複合型イオン導電体の概念をメゾ多孔体を用いて実現するには、ナノスケールでも結晶相を保つ材料が求められる。一方積層欠陥などの欠陥を生じやすいイオン導電体においては、結晶構造の乱れによるイオン導電率の上昇が期待される。またイオン導電率上昇を伴う相転移を示す物質は細孔内で高イオン導電相が安定化されることがわかった。これらの条件を満たす物質を用いることにより、リチウムイオン導電体においても高いイオン導電率を有する固体電解質が得られると考えられる。
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