2005 Fiscal Year Annual Research Report
電子正孔対の高効率輸送とこれを利用した光学非線形性の研究
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17760019
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
清水 誠 独立行政法人理化学研究所, 励起子工学研究チーム, 研究員 (80332310)
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Keywords | 電子正孔対輸送 / 励起子輸送 / 収束イオンビーム / 顕微分光法 / アップコンバージョン / 捕集システム |
Research Abstract |
1.試料作製法の開発 電子正孔対を高効率輸送するためには、電子正孔対にとってのポテンシャル勾配を用意する必要がある。このための要素技術として、構成原子を収束イオンビーム注入することにより混晶半導体における局所的な化学量論的組成比を操作する技術の開発をおこなった。具体的には、Gaイオンビーム注入によって、Al_<0.4>Ga_<0.6>As-Al_<0.7>Ga_<0.3>As量子井戸構造のうち、井戸部分のGa組成比を増大させることを試みた。様々な条件で試みた結果、この方法では、再現性良く試料を作製することが困難であることがわかった。結晶性を回復するために熱処理をおこなうと、相互拡散によって量子井戸構造が破壊されてしまうためである。 そこで、ポテンシャル勾配を実現するための別の方法を考案した。これは、イオン照射時に発生する格子欠陥が相互拡散を強める性質、を積極的に利用する方法である。このために、組成比が大きく異なる井戸・障壁層からなる量子井戸構造(GaAs-Al_<0.7>Ga_<0.3>As)を準備した。収束イオンビームのドーズ量に比例して、障壁層のAlと井戸層のGaが交換されるために、量子井戸内の局所的な準位エネルギーを操作することができる見込みである。現在、実験が進行中である。 2.測定系の開発 電子正孔対のドリフトを、実空間上で観察するための、共焦点顕微分光システムを組み上げた。励起光位置とフォトルミネッセンス観察位置とを、独立に操作することできる。 3.理論 電子正孔対の高効率輸送によって可能となる応用技術について、理論面からの検討をおこなった。その結果、数10ミクロンの輸送によって、(a)著しい励起子非線形性の増大が見込めること、(b)インコヒーレントな長波長光を短波長光へと高効率に変換できる可能性があること、を示した。
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Research Products
(4 results)