2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17760042
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅野 卓 京都大学, 工学研究科, 講師 (30332729)
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Keywords | フォトニック結晶 / 点欠陥共振器 / 光子保持 / 光Q値微小共振器 / 光バッファメモリ |
Research Abstract |
本年度は申請者が発案した共振器構造であるダブルヘテロ構造を用いることで2次元フォトニック結晶スラブ点欠陥共振器のQ値を60万という世界最高レベルにまで増大させることに成功した。また構造揺らぎの影響を検証することで、加工精度が共振器Q値に与える影響がQ値に換算して100万程度であることを明らかにした。 (1)電磁界シミュレーションを用いて、発案したダブルヘテロ構造共振器の具体的構造を設計した。厚さ250nmのSiスラブに三角格子状の空気穴をあけた二次元フォトニック結晶を想定し、そこに空気穴を一列埋めた線欠陥導波路を導入した構造を基本単位とし、格子定数が420nmの単位構造を格子定数が410nmの単位構造で挟み込んだ共振器においてQ値200万の理論値が得られることを見いだした。これにより理論Q値を従来の20万程度から10倍程度向上させることに成功した。 (2)電子ビーム描画装置およびプラズマエッチング装置を用いてSOI基板に対して加工を行い、直径240nm程度の空気穴を設計パターンに従って形成することで、実際に共振器を作製した。作製構造に対して高精度波長計と可変波長レーザを用いて光学測定を行った。これにより、共振半値幅が2.7pm程度、Q値にして60万程度の世界最高レペルの微小共振器を実現することに成功した。 (3)作製された共振器に対してAFM、SEM等を用いた構造観察を行い、表面の凹凸や穴の位置や半径の揺らぎ等を測定した。その測定値から構造揺らぎによってどの程度の散乱損失が生じうるかを理論的に計算した。その結果、散乱損失はQ値に換算して100万程度の値であり、実験で得られたQ値60万と設計上のQ値200万の差をよく説明できることが分かった。これにより、穴の位置や半径の揺らぎを抑制することがより高いQ値を得る上で重要であることを明らかにした。 以上の成果により、ナノ秒レベルの光子保持時間をもつ共振器を実現するめどを得た。来年度は、Q値の動的制御を行い、光子を効率よく捕らえて保持する実験を行う予定である。
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