Research Abstract |
今までの研究では,流れの中の最短経路問題をボート航行距離方程式と呼ぶ偏微分方程式の境界値問題に定式化して解くことを提案した.また,曲面の場合にもボート航行距離方程式を与えた.そして,これらの方程式に対して,数値計算法を考案してきた.その方法が安定であるためには,ボートが流れよりも速くなければならなかった.これは,応用範囲の拡大をする上で,一つの障害であった.例えば汚染物質の拡がり予測などでは,流れの方が速い.また,曲面の場合には,勾配が大きくなるとうまくいかないという欠点があった. 今回は,流れがボートより速くても,また,勾配が大きくても安定に計算できる新たな常微分方程式の系を構築した。その方法は,自由境界問題を解くためのマーカー粒子法を基にしている.境界をマーカーと呼ばれる粒子で近似し,その粒子を追跡する方法である.しかしながら,普通のマーカー粒子法は今回の問題に対してはうまくいかない.なぜなら,等距離曲線が特異性を持つからである.すなわち,最短経路を追跡する上でこの曲線の法線を必要とするが,法線の有限差分的近似では,特異性により不安定を起こすからである.今回,その克服のために,粒子の運動を表す微分方程式に対して,法線方向の変化を表す微分方程式を構築することにより,粒子を独立に計算できる方法を構築した.ボートの速さおよび流れ場が滑らかならば,最短経路自身には特異性がないので,安定に計算することができるのである.同様に,曲面に対する常微分方程式の系も構築した.
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