2005 Fiscal Year Annual Research Report
情報伝達の観点から迫るエージェントモデルの構造と解析
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17760067
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 彰洋 京都大学, 情報学研究科, 助手 (50335204)
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Keywords | ティック頻度 / 外国為替市場 / 高頻度経済時系列 / スペクトル解析 / スペクトル距離 |
Research Abstract |
初年度は外国為替市場の高頻度時系列分析を行なった。対象とした高頻度時系列データはCQG社が提供する外国為替市場で取引相手を探し出すために市場参加者がブローキングシステムを通じて提示する建値と提示時刻の記録からなるものである。分析対象とした通貨ペアは流通量が多い通貨ペアであるUSD/JPY(1991年-2004年),EUR/USD(1999年-2004年),EUR/JPY(1999年- 2004年)である。本分析では、市場参加者がブローキングシステムに対する働きかけの頻度に着目した。これは、脳神経科学におけるパルス頻度が情報の伝播を担っているという仮説との類似性から、外国為替市場において建値提示頻度が情報伝播に関係していると考えたからである。高頻度時系列から計算されるティック頻度に対するスペクトル分析の結果以下のことが明らかになった。(1)外国為替市場の建値ティック頻度には、数分の周期性が現われたり、消えたりする現象を分析期間から2002年までの間に各通貨ペアに対して断続的に見出した。(2)周期的な振る舞いには地域性があり、アジア活動時間帯、アメリカ活動時間帯ではほとんど確認されない一方、ヨーロッパ活動時間帯で顕著に確認される。(3)確認された周期性の振動数は通貨ペアによって異なり、また、複数の周期性が表れる場合すらある(4)ティック頻度のスペクトログラムをスペクトログラムの相対エントロピーによって定量化する手法を開発し、この手法を用いてスペクトログラムの類似度の観点から、USD/JPY,EUR/USD,EUR/JPYの通貨ペアのティック頻度は1999年より年々類似度が増していることを確認した。(5)2004年においてUSD/JPYとEUR/USDでは類似度は小さく、一方、USD/JPYとEUR/JPY,EUR/JPYとEUR/USDは類似度が高いことが見出された。このような特徴的な周期性が為替市場の建値頻度に確認される理由として2つの仮説を提案した。1.市場参加者は共通の外因性の周期情報に駆動されるため、周期的に建値提示を行なっている(確率共鳴)。2.市場参加者の建値提示活動が相互作用を生じることによって自発的に周期的な振る舞いが生じる(自発同期)。3.ブローキングシステムのシステム運営上の要因。
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Research Products
(6 results)