2006 Fiscal Year Annual Research Report
情報伝達の観点から迫るエージェントモデルの構造と解析
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17760067
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 彰洋 京都大学, 情報学研究科, 助手 (50335204)
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Keywords | 行動頻度 / 外国為替市場 / 高頻度経済時系列 / スペクトル解析 / スペクトル距離 / エージェントモデル / 確率共鳴(共振) / 動的ネットワーク |
Research Abstract |
本年度は前年度実証分析を行った外国為替市場における注文頻度時系列分析の追加分析を行い、外国為替市場で取引されている15種類の通貨ペアに対して注文頻度時系列のスペクトル分析を行った。その結果、ほとんどの通貨ペアの注文頻度時系列に数分のオーダで周期成分が検出され、更にピーク周波数は通貨ペアに対して様々な値を取りうることを見出した。このようにほとんどの通貨ペアに対して周期成分の検出が行われたことから、周期的な挙動は外国為替市場参加者に共通に見られる普遍性のある現象であると結論付けられる。このような周期的挙動の可能性として前年度に提案した仮説である市場参加者が共通の外因性周期情報を知覚しているというモデルをN人の市場参加者がM種類の通貨ペアの交換を行うという二分グラフによるエージェントモデルを用いたモデルに拡張した。このモデルはエージェントが市場の状態と外部情報を知覚し、この状態に基づき判断を行い売る、待つ、買うの3つの行動のいずれかを生起するモデルである。市場価格は市場参加者が取った投資態度から決まる超過需要によって動き、注文頻度は買うあるいは売るの行動の選択総数から決まると仮定した。たとえ、投資行動に直接関係しないほど弱い周期情報であっても、全てのエージェントが共通の周期的に脈動する情報を知覚していると仮定すると、注文行動頻度時系列のパワースペクトルに周期情報の周波数に対応したピークが現れることを数値シミュレーションにより示した。更に、前年度提案した行動頻度時系列のパワースペクトルの形状を比較する数理的手法を、エージェントモデルにより分析した。その結果、スペクトル形状の差異とエージェントの行動パラメータとの差異とに相関があることを数値的、理論的に見出した。更に、提案手法の計算に短時間フーリエ変換を利用することにより、高解像度でエージェントの振舞いの差異を動的ネットワークを用いて可視化する技術と、可視化したネットワークの総合的な判定尺度を提案した。以上より、市場参加者の行動頻度時系列を分析することによって、市場参加者の状態すなわち市場の状況を推測できることを示した。
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Research Products
(6 results)