2006 Fiscal Year Annual Research Report
結晶方位解析および原子間力顕微鏡によるナノ結晶材料の疲労損傷の微視機構の解明
Project/Area Number |
17760076
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
木村 英彦 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 講師 (60345923)
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Keywords | ナノ結晶 / 疲労損傷 / 微視機構 / 結晶方位解析 / EBSD / 原子間力顕微鏡 |
Research Abstract |
ECAP法により,平均結晶粒径が300nmの超細粒材料を作製し,その疲労特性を検証した.繰返し疲労下における表面損傷機構を,ナノスケールの同一領域においてEBSD法,AFM法やSEM法などの多角的計測法を統合することにより解明した.まず,SEMによる損傷領域の観察と,AFMによる同一領域の3次元計測を組合せることにより損傷形態を定量的に明らかにした.更に,この同一領域におけるEBSD結晶方位計測を統合することにより,損傷機構のメカニクスを解明した.その結果,疲労損傷部は結晶方位が一致した粗大領域となっていることが明らかとなった.同一領域の損傷前の観察では超細粒結晶が計測されていたため,本材は疲労過程において結晶粒が粗大化するプロセスを伴うことが明らかとなった.ナノスケール解析の結果,繰返し疲労によりすべり損傷が発生し,すべり先端の応力集中により損傷付近の結晶方位が回転することが解った.これにより結晶方位の一致した領域ですべりが成長し,結晶粒の粗大化が進展することを解明した.これは通常の比較的粗大な結晶粒を有する材料とは大幅に異なる挙動である. ECAP材では超細粒化により機械的強度の上昇が得られるが,疲労過程においては結晶粒の粗大化により疲労強度がHall-Petch則で予測されるよりも低下することを示しており,機械構造物の設計においては危険側に材料特性がシフトすることを意味している.本研究により結晶粒の粗大化およびそれに伴う疲労強度の低下を解明したことは,実用化への指針を構築する上で意義深いと言える.また,き裂伝ぱ挙動を詳細に観察した結果,この結晶粒粗大化挙動は応力拡大係数に依存することが明らかとなった.粗大化は特に疲労き裂伝ぱの下限界付近で顕著になっており,逆に高速伝ぱ領域では観察されなかった.つまり,実用化においては低応力側・長寿命側において疲労特性が劣化することが多いため配慮が必要となることを本研究で明らかにした.
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Research Products
(7 results)