2005 Fiscal Year Annual Research Report
PVD薄膜の構造粗雑化による疲労強度向上に関する研究
Project/Area Number |
17760086
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
米倉 大介 徳島大学, 工学部, 助手 (70314846)
|
Keywords | 薄膜 / PVD / CrN / 割れ強度 / アークイオンプレーティング / バイアス電圧 |
Research Abstract |
本年度は,下記の実験を通して,低バイアス電圧で作成したCrN薄膜の引張荷重下での破壊挙動について検討を行い,その結果をもとにして,疲労強度の向上要因と低下要因の考察を行った. S45C焼入・焼戻し材上に,AIP装置によって厚さ2μmのCrN薄膜をコーティングした.コーティング時のバイアス電圧には,0〜-40Vの低バイアス条件と-80V,-300Vの通常条件を用いた.作成したコーティング材について,引張試験を室温大気中で行い,レプリカ法による薄膜の割れ挙動の観察をそれぞれの試験片を用いて行った.その結果,-40V以下の低バイアス電圧では短い割れが多数発生するのに対し,-80V以上の高バイアス電圧では低バイアス電圧材に比べて長い割れが発生することが明らかになった.また,それぞれの試験片について,超微小硬度計による薄膜の弾性率および硬度の測定を行った結果,割れ挙動に変化が現れたバイアス電圧-40V以下で弾性率が大きく低下することがわかった.これら結果から,低バイアス電圧では薄膜の破壊靱性値が高くなり,長い割れを形成し難くなったことが考えられる.そこで,薄膜の靱性値とバイアス電圧の関係について検討を試みた.代表的な薄膜の靱性値の測定方法には,ビッカース圧子を用いる方法がある.しかし,今回作成した試験片では,圧痕からの割れが生じず,靱性値の算出を行うことができなかった.そこで,引張負荷時の飽和割れ間隔と弾性率から靱性値を評価する方法を試みた.算出の結果,薄膜の靱性値はバイアス電圧によらずほぼ一定になり,前述の割れ挙動とは相反する結果となった.この理由として,ドロップレットが挙げられる.今回の靱性値算出に用いた理論ではドロップレットのような巨視欠陥を考慮していないためと考えられる.そこで,次年度はドロップレットの影響も考慮した評価を行い,疲労強度の変化機構を解明していく.
|