2005 Fiscal Year Annual Research Report
生体融和チタン合金の自家骨結合過程における腐食疲労挙動とその機構の解明
Project/Area Number |
17760092
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
久森 紀之 上智大学, 理工学部, 助手 (80317510)
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Keywords | チタン合金 / 腐食 / 疲労 / アパタイト / 微細構造 / 不動態 |
Research Abstract |
生体融和チタン合金表面にアパタイト核が析出・形成し骨と直接接合する過程および結合したインプラント材に電気化学反応を利用した腐食反応から腐食劣化挙動について検討した.また,疲労損傷(繰返し荷重)を加え,き裂発生の有無やその進展が骨生成能と結合能に及ぼす影響を系統的に解明した. 1.本申請で購入した電気化学計測器と電気油圧式材料試験装置を組み合わせた試験装置を作製し,腐食挙動と応力を同時に計測することで傾斜構造に及ぼすチタン合金の隙間腐食挙動,かかるき裂発生の有無とその進展の相互関係を明らかにした. 2.腐食と疲労が同時に作用する環境下におけるチタン合金の耐食性は,荷重を負荷する周波数に関わらず疲労損傷を付与することで低下することが明らかとなった. 3.試験片に定電位を与えた状態で疲労損傷を加えると,き裂先端近傍のアパタイト析出層の割れおよびき裂が進展することで生じる新生面がアノード極となり,電流密度の値が上昇する.その際の損傷の度合いは,周波数に依存し,その速度が大なる程,安定な不動態皮膜の再生が困難である. 4.しかしながら,繰返し回数からチタン合金の耐食性を考慮すると,周波数に関わらず破断に至るまでの繰返し回数は同程度であり,き裂の進展に伴う腐食反応が疲労損傷に及ぼす影響は小さいことが明らかとなった. 5.これら腐食電位と応力が同時に作用した環境で析出するアパタイトの表面・内部構造を各種顕微鏡より発生過程の空間的・時間的高倍率観察を通じ,腐食電位と荷重が析出反応に関与する機構を微細構造観察から明確にした.加えて,結晶構造解析から析出層の存在状態を明確にした. 以上,本研究で得られた知見は,ヒトの歩行周期に相当する疲労損傷で,チタン合金の再不動態化能の低下を導くことを示すものであり,実用上考慮すべき重要な事柄と言える。
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