Research Abstract |
近年は自動車,電子精密機器の発展や,機械の小型化が進められており,その構成部材,あるいは加工用部材(シリコンウェハーのワイヤ切断など)として細線材の需要が高まっている. 0.4mm以下の細線材は多種の材料にわたり,多目的に使用されており,現代社会において腰不可欠な部材である.細線材に要求される技術課題は,細径化,高強度化,高延性化,高真直度化などであり,この中で高強度化に関する研究が最も注目を集めている.高強度化の重要な問題点の一つとして,線径の影響すなわち「寸法効果」が挙げられる.この寸法効果が解明されれば,細線材の一層の高強度化が大きく前進する. 本研究では寸法効果の要因の一つとして,伸線加工においてダイスと線材の間の摩擦で表層部のみに発生する付加的なせん断ひずみ層に着目し,(1)せん断ひずみ層が細線材の引張り強さに与えている影響,および(2)付加的せん断変形が線材表層部の内部組織に与えている影響の2点を対象として究明することを目的とした.その結果、以下の知見を得た。 (1)鉄鋼系材料の場合,せん断ひずみ層は,線径,およびC含有量とは無関係に一定の深さで発生し,その深さは連続伸線でも保持される.(2)せん断ひずみ層では,引張り強さが大きく上昇する.これは,付加的せん断変形による結晶回転で発生する結晶粒分断化を起因としている.(3)以上の結論から,細線材ほどせん断ひずみ層の占める面積割合が増加するため,伸線限界が上昇し,高い引張り強さを示すひとつの有力な要因を示すことができた.
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