Research Abstract |
本研究の目的は,ナノ,マイクロサイズの気孔を有するセル構造体の接触機構の解明及びそれに基づくトライボロジー特性改善のためのセル構造の好適設計指針を明らかにすることである.平成18年度に得られた主な結果は以下のとおりである. (1)気孔率が6.72%である成長黒鉛鋳鉄の切削粉を用いて,気孔率がほぼ等しく(17.1%,19.1%)気孔径分布の異なる2種類の多孔質鋳鉄材料を粉末冶金技術によって作製した. (2)幅広いすべり速度,荷重条件(すべり速度:0.001〜4m/s,垂直荷重:0.49〜9.8N)において,気孔率6.72%の多孔質鋳鉄材料は,低すべり速度・高接触圧力条件下及び高すべり速度条件下において油膜破断により,0.2以上の高い摩擦係数を示すのに対して,気孔率17.7%,19.1%の多孔質鋳鉄材料は今回の試験条件の範囲では,明確な油膜破断を興さず,すべての条件において0.2以下の低い摩擦係数を示すことが判った.このことから,気孔率の増加に伴う,含油条件下での摩擦特性の向上が確認された (3)幅広いすべり速度,荷重条件において気孔率6.72%の多孔質鋳鉄材料は,1×10^<-8>mm^2/N以上の高い比摩耗量を示すのに対して,気孔率17.7%,19.1%の多孔質鋳鉄材料はすべての条件において,1×10^<-8>mm^2/N以下の低い比摩耗量を示すことが判った.このことから,気孔率の増加に伴う,含油条件下での耐摩耗性の向上が確認された. (4)気孔径分布の異なる2種類(気孔率:19.1%,17.7%)の多孔質鋳鉄において,気孔径が小さく,かつ気孔径にばらつきの少ない多孔質鋳鉄は,低接触圧力,低すべり速度条件において1×10^<-10>mm^2/N以下の極めて低い比摩耗量を示すことが判った. (5)本研究の結果より,気孔率の増加及び気孔径分布のばらっきの制御により,従来の含油軸受では使用不可能であったすべり速度1m/s1以上の高すべり速度域で使用可能な含油軸受が実現できる可能性があることが判った.
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