Research Abstract |
ナノ高分子潤滑膜のテクスチャ構造による機能性トライボ表面を創成することを目的に,ナノメートル厚さのPFPE潤滑膜を塗布した磁気ディスク表面にマスクを介して紫外線(UV)を照射することにより,テクスチャ構造を形成する方法を提案した.これまでに得られた結果を要約すると以下のとおりである. (1)UV照射によって,PFPE潤滑剤分子と磁気ディスク表面との相互作用が増強される効果を利用して,ナノメートル厚さの分子潤滑膜を塗布した磁気ディスクにマウスを介してUVを照射し,UV露光量を局所的に変化させることによって,化学的デクスチャを形成する方法を提案した. (2)縞幅5.0,2.0,0.5μmの3種類の縞状マスクパターンを用いて縞状の化学的テクスチャを形成し,その表面において,縞パターンに平行な方向と直交する方向について、段差状に形成した潤滑膜の境界からの表面流動特性を比較評価した.表面流動における拡散係数に縞方向に依存した異方性が生じることから,化学的テクスチャの有効性を初めて確認した. (3)大気中における254nmのUVを露光する市販の光表面処理装置を使用したため,照射エネルギーの不足や,発生した活性化オゾンガスの浸透によるパターン境界のボケなどの問題があった.そこで,窒素雰囲気における172nmのUVを露光するための装置を新たに設計・製作した.また,マスクパターンについては,テクスチャ形成を光学式表面分析装置(空間分解能:5μm)を用いて直接可視化するために,縞幅を100,20μmに拡大したモデルを作製した. (4)モデルマスクを用いて形成した化学的テクスチャ表面において,膜厚分布を経時的に観測した.この結果,潤滑剤分子が平衡状態に至るまで,非照射領域から照射領域へ表面流動し,膜厚が再分布する様子を観測し,化学的テクスチャ表面の構造(三次元凹凸構造)を確認した.
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