2005 Fiscal Year Annual Research Report
キャビテーション気泡群のための大規模シミュレータの開発および理論解析
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17760151
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
井田 真人 独立行政法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究員 (60391356)
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Keywords | 気泡 / シミュレーション / 数値流体力学 / 気泡群 / キャビテーション / 自由表面流れ / avoided crossing / 擬交差 |
Research Abstract |
本研究課題は、粘性液体中で体積振動する複数の気泡の挙動を解析するための数値シミュレータの開発と、理論解析による気泡群の物理の解明を目的とするものである。平成17年度は主に理論研究から複数の重要な知見を得ることができた。 まず、我々が提案した「遷移周波数」と従来から知られる特徴周波数(共振周波数および自然周波数)との間に有る相違点と類似点を整理し、遷移周波数を定義することの意義や、遷移周波数が持つ物理的意味をより明確なものとした。また、幾つかの遷移周波数が消える気泡間閾距離を理論的に決定する方法を提案し、例題によってその検証を行った。この方法は気泡間相互作用の強度を測る指標とて利用する等の応用が期待できるものである。さらに、気泡間に働く力について再議論し、力の方向が気泡間距離や入射音波の周波数に依存して反転する現象に関する簡潔明快な解釈法を提示した。これは音場中での安定な気泡群の生成等を理解するための有用な知見となると思われる。 理論研究からはさらに、予想外の発見があった。3つ以上の気泡が相互作用する系において、気泡が持つ共振周波数が「擬交差:avoided crossing」を示す場合があることを見いだしたのである。擬交差とは複数の相互作用する固有値が示す奇妙な振る舞いのことで、量子化学やカオス力学の分野では度々議論されてきた現象であるが、気泡力学の分野では研究例が無い。我々は相互作用する気泡同士がこの擬交差を通じて互いの振動状態を交換し合うことを見いだし、また遷移周波数を観察することでこの状態交換が起こる物理条件を把握することができることを示した。 シミュレーション手法については、気泡群の持つ時間・空間マルチスケール性を扱うのにふさわしい計算格子系と時間積分法について調査検討を行い、また計算スキームの質量・エネルギー保存性能について予備的な検討を行った。
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