Research Abstract |
固体高分子形燃料電池(PEFC)は,次世代自動車用動力源や定置型分散電源として普及が期待されているが,高性能化に向けて解決すべき課題は多く,その一つにカソード側で生成した水分がガス拡散層(Gas Diffusion Layer, GDL)内部で凝縮し,反応に必要な酸素の供給を阻害する問題(フラッディング現象)がある.従来までの研究において,PEFCカソード側流路における生成水の可視化観察はこれまでにも行われているが,GDL内部における水分状態については十分検討されておらず,フラッディング現象を解決し,PEFCの性能改善を図るには,カソード側GDLにおける水分の存在状態およびその挙動を把握することが必要不可欠となる. そこで本研究では,3次元デジタル光学顕微鏡システムを用いることにより,PEFCカソード側GDLにおける凝縮を伴う水分をミクロレベルで可視化観察できるようにし,ガス流路構造やGDLの厚みによって,GDL内部の水分の存在状態がどのように異なるかを実験的に検証した.その結果,蛇行流路型(サーペンタイン流路型)PEFCセルにおいて,GDL内部での水分の凝縮は,流路の下流側で生じやすく,凝縮水の水分量も下流側の方が多くなることが示された.また,190μm,360μmの厚みの異なる2種類のGDLを用いて,GDL上に排出された水分の可視化観察および電流-電圧特性の計測を行った結果,GDL厚さ190μmの場合に比べて,360μmの場合のほうが水分の排出量は少なく,セル電圧については,特に高電流密度域において大きく低下することがわかった. 次に,カソード側GDL内部における水分挙動に関する基礎的な知見を得るため,溝を設けたGDLを製作し,溝部における凝縮水の可視化観察を行った.その結果,多孔質状GDL内部には多数の水分経路があり,凝縮した水分が厚み方向に移動する際に,他の経路から移動してきた水分と結びつき,その結果,大きな水滴に成長してGDL表面に排出されていることが明らかになった.
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