Research Abstract |
核融合実験装置で用いられる大型コイルの導体はケーブル・イン・コンジット(CIC)型導体は,直径1mm程度の超電導素線を多数段にわけて撚り合わせ,圧縮して金属のケース(コンジット)に収納された構造を持つ.素線配置は,導体圧縮時に生じる撚り乱れによって,初期の幾何学的対称位置から変位している.この時素線間の接触状況は,予想された点接触から接触長の長い線接触になることが最近明らかになった.撚り乱れによって,導体内では変動磁界環境中において各素線に鎖交する磁束が均一ではなくなり,遮蔽電流が素線同士の接触箇所を横切って流れる. 素線間接触抵抗は,値が低いほど電流ループの時定数が長くなり,その結果交流損失の増大が観測される.通電中は素線に強大な電磁力が印加される.このとき観測された交流損失は,電磁力の増大に伴って約15%程度増加することがわかった.これは電磁力によって素線間の接触長が長くなり,接触抵抗の低下によって発生する損失の増大と考えられた. 研究では,核融合科学研究所のLarge Helical Device用超電導コイルの導体のコンジットを約70mmの長さで剥ぎ取り,そこに銅電極を介して100kN/m(20kA,5T)の圧縮力を3サイクル印加して,導体の変位と導体を横切る方向の抵抗値を測定した.その結果,導体のボイド率は約6%減少し,電磁力によって大きく素線配置が変動することが確認された.また,各サイクル毎の導体変位と抵抗の減少率では,1サイクル目が大きく変動,抵抗減少するのに対し,2,3サイクルでは1サイクルの半分程度で,1サイクル終了後に素線の配置が初期状態まで戻らない,不可逆的変位が発生していることがわかった.別の実験で用いた81素線導体サンプルから得られた空隙率-素線間接触個数の相関関係を用いて一定の接触抵抗を持つ接触点が増加すると仮定し,電流パスの増加から抵抗変動率を見積もると,減少率に対して1/5程度の寄与しかないことが見出された.そこで,接触長が増加することで抵抗が減少すると再仮定すると,最大で約4倍の接触長の増加が必要であることがわかった.電磁力による接触長変化を示唆する有用な結果が得られた.
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