Research Abstract |
前年度の研究により,数10mT程度の外部交流磁界下(縦磁界および平行横磁界下)において交流電流を輸送する銀シース超電導線材内において,外部交流磁界によって発生する磁化損失が全損失の大部分を占めていることが判明した。超電導体自身が発生する磁化損失は,超電導体の多芯化(細線化)により理論的には低減可能であるが,母材である銀の抵抗率が低い(〜0.3×10^<-8>Ωm@77K)ために,超電導芯同士が電磁気的に結合してしまう。この芯間電磁結合が,銀シース線材の磁化損失低減下において大きな障害となっていることを確認した。この問題を解決するために,超電導芯間に酸化物材料を高抵抗バリア層として導入して母材抵抗を向上させることにより,芯間電磁結合を抑制ならびに磁化損失の大幅低減を実現するための基礎的検討を行った。事前の探索実験に基づいて,Bi2223系超電導体との反応性の少ないCa_2CuO_3をバリア材料として選択した。更に,線材化の際の加工性を向上させるために,Bi_2Sr_2Ca_2Cu_3O_x(Bi2212)粉末をCa_2CuO_3に対して質量比で30%程度混合したものを芯間に導入した。作製した線材の断面観察結果より,超電導芯の断線や形状の乱れは殆どなく,バリア層は所々切れている箇所もあるが概ね芯間に介在していることを確認した。バリア層の導入の際に懸念される臨界電流密度(Jc)の劣化は10%程度に抑制されており,数mの線材長全域に渡って10^4A/cm2を超える均一なJc値(77K,自己磁界下)が得られた。この結果より,採用した混合粉末バリア材が長尺化にも対応できる可能性が示された。77K,平行横磁界下での交流特性の評価結果より,バリア層の導入により芯間横断抵抗率(ρ_t)は6〜7倍程度向上していることが示唆された。更に,送電ケーブル内の最大経験磁界(振幅値)に近い50Hz,50mT印加時において,バリア線材の磁化損失は,通常線材と比較して1/4程度に低減されていることを確認することができた。線材形状(芯数,断面扁平率等)の最適化と併せて,バリア層の連続性が改善することができれば,更なるρ_tの向上および磁化損失低減化が期待できる。
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