2006 Fiscal Year Annual Research Report
分子配向・凝集状態に着目した有機分子半導体材料の電荷輸送の物理モデルの構築と評価
Project/Area Number |
17760249
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大野 玲 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 研究員 (70397058)
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Keywords | 有機半導体 / 液晶 / 電荷輸送 / 分子軌道計算 / ホッピング伝導 / ポーラロン / ディスオーダーモデル / 光電流 |
Research Abstract |
分子配向に対するポーラロンホッピング伝導を評価するため、いくつかのモデル分子を下に、分子軌計算を第一原理の密度汎関数を用いて計算した。特に2分子間のトランスファー積分を見積もるため、最適化計算で最適化された原子配置の分子を2つ並べ、2分子の配置の変化に対するトランスファー積分の違いを見積もった。本年ではダイマー形成の分裂軌道のエネルギー幅の1/2をとることにより、挙動を見積もることが出来た。これは強束縛近似の元で、重なり積分を無視、他の電子軌道との相互作用も無視できるとすれば、近似的に見積もることができたと考えている。 モデル分子はビフェニルの誘導体・フェニルナフタレンの誘導体について計算した。配置は、凝集状態がスメクティック液晶を形成しているときを想定して、分子長軸方向、短軸方向にそれぞれ分子間距離を変え、トランスファー積分の変化を見た。 つぎにディスオーダーモデルについて、分子間のホッピングを従来のMiller-Abrahamホッピングレートを用いた計算ではなく、本来のポーラロンホッピングの速度式を用いて再構築し、シミュレーションを行った。その結果、このような系に即した移動度の電場・温度依存性について、通常の電場領域(<10^5V/cm)での挙動を明らかにした。これはJをトランスファー積分、λを再配置エネルギー、σをエネルギーのディスオーダーのパラメータとして μ=(ea^2)/(k_BT)(J^2)/(【planck's constant】)√<(4π)/(λkT)>exp[-λ/(4k_BT)]exp[-(σ/(2k_BT))^2] とあらわすことができ、上記3つのパラメータが電荷輸送特性を制御していることがわかる。このうち、実験から得られたビフェニル、およびフェニルナフタレンの誘導体の移動度の温度依存性からフィッティングで見積もったJ、λの値は分子軌道計算で求められた値と同程度になった。このことは、分子軌道計算と、上式を組み合わせることで材料合成前に電荷輸特性を予測することが可能になったということを意味し、この手法の有用性が明らかになった。
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