2005 Fiscal Year Annual Research Report
自己配線構造を有する有機ナノトランジスタの高性能化と集積回路の作製
Project/Area Number |
17760272
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
酒井 正俊 千葉大学, 工学部, 助手 (60332219)
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Keywords | ナノデバイス / 有機導体 / 電界配向成長 / 半導体物性 |
Research Abstract |
本研究は電界印加共蒸着法によるTTF-TCNQ有機導体ワイヤの作製および電気特性制御と回路化技術の開発を目的として行った。 (1)ドナー性分子TTF(テトラチアフルバレン)とアクセプタ性分子TCNQ(テトラシアノキノジメタン)を電界の存在下で共蒸着することによって、ワイヤ状の有機導体が形成される。この有機導体ワイヤの成長パラメータを最適化し、成長制御を行うために、成長機構に関する実験を行った。TTFとTCNQの分子は基板表面においてイオン化し、電場によってドリフト運動しながら有機導体ワイヤとして成長することが明らかになった。また、蒸気圧の関係からTCNQが優先成長することが明らかになり、過去に作製されたナノFET(電界効果トランジスタ)におけるチャネル層形成の原理が明確に示された。さらに、電界強度が強い方向に成長が進行することを支持する実験結果が得られた。これを自己整合型成長と名付けた。これらの結果は、次年度の研究課題である回路形成技術の基礎となる。 (2)TTF-TCNQワイヤの接合部に形成される半導体領域(TCNQ領域)を活性層とするnチャネルナノFETを作製する新しい技術として、通電による局所加熱を試みた。有機導体ワイヤに電流を流すと、高抵抗領域において発熱が起きるため、半導体領域の局所的な温度が上昇する。TTFは若干の温度上昇によってTTF-TCNQワイヤから脱離するため、半導体領域のTCNQ純度が向上して、FET特性の向上が期待される。このような考えに基づいてFET変調が見られない接合ワイヤに通電加熱を行い、加熱時間に伴ってFET変調が実現することを実証した。また、このデバイスのFET特性からは、従来の方法により作製されたナノFETよりも半導体領域が高純度であることが示唆された。この成果は、ナノFETの歩留まりを向上するのみならず、次年度の研究においてナノデバイスの電気特性制御を行う上でも重要である。
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